安心して働き方選べる時代に 
 安心して働き方を選べる時代に――。バブル崩壊後の若年層、女性を中心にした非正規雇用の増加は、収入などの格差を生み出す要因ともなった。正規と非正規をめぐる動きを紹介するとともに、雇用格差の是正に今後、どう取り組むのかを斉藤鉄夫・党政務調査会長(衆院議員)に聞いた。

 『所得階層別の格差拡大』
 『3人に1人が非正規雇用』


 2007年版の労働経済白書によれば、雇用情勢は「改善に広がりがみられる」とする一方で、勤労者家計について「消費は全体として力強さを欠き、消費費目別にみると、教育や住居などの支出において、所得階層別の格差が次第に広がっている」と指摘し、格差拡大への懸念を示した。
 その要因として白書は、(1)正規雇用と非正規雇用の賃金格差の拡大(2)正規雇用での業績・成果主義的な賃金制度の導入(3)労働時間制度の多様化――を挙げている。つまり、景気回復で企業業績は大きく改善しているものの、成長の成果が労働者の賃金上昇や労働時間の短縮には結び付いていないとの指摘だ。
 1990年代のバブル経済の崩壊以降、企業は人件費の抑制に取り組んだ。その結果、雇用の多様化が進み、正社員からパートやアルバイト、契約社員、派遣社員など非正規雇用に採用の重点が移っていった。
 この結果、総務省の「労働力調査(詳細結果)」によれば、06年平均の役員を除く雇用者数は5088万人だが、このうち正規の職員・従業員は3411万人。パート・アルバイト、契約社員、派遣社員など非正規の職員・従業員は1677万人と、非正規雇用が3割を占めるようになった。雇用者の3人に1人が非正規という状況にある。
 景気回復による企業業績の好調ぶりを反映して、06年は正規雇用は前年比で37万人の増加となった。その一方で非正規雇用も44万人増えており、非正規雇用の割合は長期的に見て上昇している。
 非正規の職員・従業員の内訳を見ると、パート・アルバイトが1125万人と最も多いが、ここ数年、その伸びは鈍化している。正規雇用の増加に伴い、新卒者のフリーター化が鈍っていることや、景気回復によりパートやアルバイトが採用しづらくなっていることが背景にある。とりわけ売り場の主力にパート・アルバイトを多用する流通・小売業界での人材確保が困難になっている。
 対照的に近年、労働時間が正社員とほとんど変わらない派遣、契約・嘱託社員が増えているという。格差拡大は社会不安の増大につながることから、成果配分を働き方に応じた内容に見直す必要がある。

 『新たな雇用に挑む 企業の例から』 
 『若者』
 『会社発展への先行投資/人材確保に労力惜しまず』

 一日約10万人が利用する成田空港(千葉県)。この空港内で旅客の応対に当たる人々は、正社員よりもむしろ契約社員、派遣社員、アルバイトが多い。
 雇用の多様化が進む空港内にあって、ワールドエアアンドシーサービス株式会社・成田空港支店は、若者の積極採用に取り組む。海外ツアー客の出入国手続きを手伝う同社の従業員は、空港内で必要なさまざまな知識のほかに、語学力も要求される。
 同社も以前は正社員の採用にこだわった。しかし、ここ1、2年、求人広告を出しても人が集まらなくなった。景気回復に伴い若者が大手などに吸収されるようになったためだ。そこで同社は採用活動を強化。職場見学会や説明会を積極的に開催し、ジョブカフェやインターネットを介した求人も始めた。応募の門戸も広げ、学歴や職歴などにはこだわらず「本人の挑戦する意欲」(佐藤幸枝課長)をポイントにした。
 その分、適性を見極めるため半年間は契約社員として雇う。社員教育にも力を入れ、現在、昨年8月に中途採用した3人の若者が活躍する。いずれもかつてのフリーターやアルバイト。以前に比べて採用には時間も労力も、そしてコストも格段にかかるようになったが、「会社発展のための先行投資」ととらえる。
 一方、千葉県柏市でシステム開発などを行う情報処理サービス企業「株式会社エム・ビー・エス」も、若者の採用に意欲的に取り組む。同社も以前は経験者を採用の条件としていた。だが今は、全くの未経験者も受け入れる。「人材確保ができないと会社の存続にかかわる」(横倉英一郎システム部長)ためだ。
 その分、新人教育に力を入れ、同業他社と共同で、3カ月間の新人教育を協力会社に委託している。

 『女性』   
 『多様な働き方に道開く/意欲と能力引き出す制度へ』

 金融や小売業界などを中心にパートや契約社員を正社員化したり、多様な働き方に道を開く動きが広がっている。
 三井住友銀行は昨年末、今年7月をめどに派遣社員約2000人を正社員として雇用すると発表した。同時に「一般職」も廃止する。意欲や能力次第で管理職に昇進できる制度とすることで女性の登用を進め、人材の有効活用を狙う。同行はこれらの改革で、人件費が年間数十億円増えると見込んでいる。
 総合スーパー大手のイオンは昨年2月、正社員とパートがともに65歳まで働ける制度を取り入れた。定年の年齢を引き上げるだけでなく、転勤の有無、労働時間、勤務地などの選択が可能になり、すでに7000人ものパートが60歳を超えて働き続ける。社員の8割をパートが占めるイオンは、2004年から正社員とパートの人事制度を一本化。正社員と同じような働き方ができる非正社員は、正社員と同じ資格昇級試験を受け、正社員と同等の資格につくこともできるようになった。
 希望すれば正社員になることもできる。このため年2回以上の上司との面接や、人事部に相談窓口を設ける。今やパートは売り場担当だけでなくマネージャーにも、中には店長クラスも誕生している。
 一方、イトーヨーカドーも昨年3月に、パートの人事制度を改めた。働き方を選べる「ステップアップ選択制度」を設け、賃金や評価制度も見直した。ステップアップ選択制度は、パートの職務を仕事の役割や必要とされる技術・技能などからの3段階に区分。本人が希望すれば上位職にチャレンジできるようにした。
 現場を支えるのは女性のパート。このため「働き方の多様化を図り、働く意欲を長続きさせる仕組みとした」(広報部)という。

 『斉藤鉄夫党政務調査会長に聞く』
 『「同一労働・同一待遇」実現めざす/働きやすい環境にこそ日本の未来が』

 バブル経済崩壊以降、わが国の雇用形態は大きく変化した。多様な働き方ができる社会になった半面、国際競争力維持のために雇用規制を緩和した結果、正規雇用と一時的な雇用の間で、賃金、待遇などの格差が広がった。こうした負の側面を是正していくことが政治の役割だと考えている。
 そのためには、「同一労働・同一待遇」という大原則を、労働法制の中にしっかり盛り込まなくてはならない。日本ではなかなか定着しないが欧米ではかなり普及しており、日本だけできないということはありえない。労働慣行のしがらみを一つ一つ解きほどいていけば、給与だけでなく休暇や年金、保険などでも同じような待遇を実現していくことは可能だろう。
 公明党は、こうした格差是正に向けて、昨年に限っても、最低賃金の引き上げや短時間労働者の年金・医療保険加入の拡大、さまざまな窓口を通じてのフリーターやニートなど若者の就職支援の拡大、短時間正社員制度導入や正規雇用化に対する支援策などを推進。正社員との同一待遇、同じ社会保障実現に向けて先頭に立ってきたと自負している。
 企業でもここ数年、新規採用の拡大、派遣労働者やパートの正規雇用化などの動きが顕著だが、今後の課題は、7割の人が働く中小企業において、働き方が変わったと実感していただけるような施策を推進していくことにある。
 これまでは、企業の成長のパイの一部で雇用環境、つまり賃金などを改善してきたが、この発想ではいつまでたっても雇用環境の整備は後回しにされてしまう。若者が結婚して家庭が持てる待遇で働ける、女性もライフステージに合わせて働き続けることができる、そして意欲があれば老後も働ける――こうした社会をつくっていかなければ、少子化、高齢化が進む日本では社会自体が成り立っていかないということが、今や明らかになっている。自らの従業員がある程度の待遇を得て潤いのある家庭生活を送ることで、経済も活性化し、その会社も潤う――こうした好循環にしていかなくてはならない。
 政治の役割は、そのための環境づくりにある。まずは長時間労働の是正や正規雇用拡大を進め、さらにかねてから公明党が推進している「仕事と生活の調和推進基本法」を制定し、誰もが将来への希望を持って働くことができる社会の実現に努力していきたい。

                                    【公明新聞掲載記事より】