平成18年5月31日 衆議院教育基本法に関する特別委員会


○斉藤(鉄)委員 公明党の斉藤鉄夫でございます。土屋委員の熱弁の後、ちょっとやりにくうございますけれども、また一生懸命頑張らせていただきたいと思います。

 予定している質問に入る前に、きょう朝からいろいろ質疑を聞かせていただきまして、不当な圧力に服することなくということが大いに話題になりました。この文言については、我が党の議論でも大変時間をかけて議論したところでございます。これを外したらどうかという議論も、現実問題として、この言葉を使っていろいろな弊害が起きている、だから外したらどうかという議論も我が党内にあったことも事実でございますが、最終的に、やはり教育の独立、不偏不党性をあらわしている象徴的な言葉である……(発言する者あり)歴史的という意味も入っております。

 昭和二十二年当時は、戦争への反省から、いわゆる軍部また軍国主義勢力からのということが念頭にあったかと思います。戦後は、その反動で、また別な方向での大変な弊害がございました。しかしながら、それは、不当な圧力に服することなくという言葉の持っている力ゆえのものだと思います。その中立性を表現する象徴性ということからも、やはり使った方がいいという表現になりました。先ほど土屋委員からも、今回、後につけている言葉と一緒に解釈して、最終的にすばらしい内容になったのでないか、このように理解をしております。

 それでは、質問に入らせていただきます。

 前回、私は、我が国と郷土を愛し、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度という部分と、それから宗教教育ということについて質問させていただき、最後、前文の「日本国憲法の精神にのっとり、」というところの質問に入って、ちょっとしり切れトンボで終わりましたので、その問題からきょうは入らせていただきたいと思います。

 現行教育基本法の前文に、「日本国憲法の精神に則り、」という言葉があります。これは、前文全体を読みますと、非常にその流れの中で、読んでいましてすとんと落ちるんです。といいますのは、現行の前文には、「さきに、日本国憲法を確定し、」云々かんぬん「この理想の実現は、根本において教育の力にまつべきものである。」という第一項がございまして、そしてそれを受ける形で、「ここに、日本国憲法の精神に則り、」この法律を制定するということで、第一項の意味を受ける形で、「日本国憲法の精神に則り、」こういう形になっています。非常に読んでいて読みやすいし、すとんと入ります。

 今回、政府案、また民主党案もそうですけれども、ある意味で突然、「日本国憲法の精神にのっとり、」と。民主党案では「日本国憲法の精神と新たな理念」云々となっておりますけれども、突然出てきて、しっくり落ちない部分もあるというのも正直なところでございます。

 まず、大臣にお聞きをいたしますけれども、ここで言う日本国憲法の精神とは何なのか、また、この「日本国憲法の精神にのっとり、」と規定した趣旨は何かということについてお伺いをいたします。

○小坂国務大臣 現行教育基本法は、日本国憲法に定める理念を教育において具体化するための規定を多く含むなど、現行の日本国憲法と密接に関連している法律であることから、「日本国憲法の精神に則り、」と規定された、このことについて委員から詳しく御説明をいただきました。

 改正後も、日本国憲法が教育基本法と密接に関連している、逆な言い方でございますが、教育基本法が日本国憲法と密接に関連しているという性格自体は変わらないものでありまして、教育基本法が我が国の教育の根本理念を定めるものであることを明確にして、さらに強調するために、引き続き、「日本国憲法の精神にのっとり、」と規定したものでございます。

 なお、この日本国憲法の精神とは何かということでございますが、国民主権、基本的人権の尊重、平和主義、さらに申し上げるならば、法のもとの平等、そして教育を受ける権利等々でございます。この教育基本法案においても、「個人の尊厳を重んじ、」これは前文において規定をしております。平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康的な国民の育成という第一条の項目など、憲法の精神を具体化する規定を設けているところでございます。

○斉藤(鉄)委員 ここの憲法の精神とは、いわゆる三原則と二十六条であるという御答弁だったと思います。

 日本のすべての法律は、憲法のもとでその精神にのっとって行われることはある意味では当然なことなんですが、ほかの法規にこういう前文なり表現がある例はないと思いますけれども、あえてこの教育基本法に憲法の精神ということがきちっと載っているということについて、もう一度、わかりやすく御答弁いただければなと思います。

○小坂国務大臣 繰り返しになるかもしれませんけれども、教育基本法が我が国の教育の法体系の中での根本理念を定める法律であるということ、そして教育基本法は日本国憲法と密接に関連している法律であるということ、そういうことから、引き続き、「日本国憲法の精神にのっとり、」と規定したことによって、その辺のところが非常に明確になるだろう、こう考えているところでございます。

○斉藤(鉄)委員 ありがとうございます。

 民主党にお聞きいたしますけれども、民主党案においても、日本国憲法の精神という規定がございます。その意味は何か、またその趣旨は何かということについてお伺いします。

○藤村議員 斉藤委員にお答え申し上げます。

 今、政府の方でもおっしゃいました、やはり私どもも、日本国憲法に付随するぐらいの、あるいはそれに準ずるぐらいの、教育の基本の法律というのは重要であるし、現行に確かに書いてあるからということではなしに、やはり私どもも、今憲法を新しく提案しようという動きがあるし、そういう中で、しかし、不変のものというのは、やはり憲法前文に流れている理念であるとか、それから先ほど来の三原則の件だとか、さらに、今文科相からは言われませんでしたが、二十三条、学問の自由であるとか、それから二十六条の、教育を受ける権利、教育を受けさせる義務、義務教育の無償などを念頭に置いて、これは今後も、我々としては、憲法提言をしておりますが、変わらない、不変のものであるし、だからこそ、それはやはり、その精神にのっとってということを今回入れさせていただいておるところでございますし、また、タイトルに日本国教育基本法とつけたのは、まさに、日本国憲法に準ずるぐらいの大切な法律であるという意味合いでございます。

○斉藤(鉄)委員 次に、前文の中にあります個人の尊厳という言葉について、政府と民主党にお聞きいたします。

 現行法にも個人の尊厳という言葉がございます。我らは個人の尊厳を重んじ、真理と平和を希求する人類の育成を期するとともに云々、政府案におきましては、引き続きこの個人の尊厳ということが規定をされております。個人の尊厳を重んじ真理と正義を希求し公共の精神を学び云々というところでございます。

 法案に、個人の尊厳、前文にですが、個人の尊厳を規定した意味についてお伺いをいたします。

○田中政府参考人 個人の尊厳についてのお尋ねでございますけれども、個人の尊厳とは、すべての個人が、他をもってかえることのできない、人間として有する人格というものを持っておって、それは不可侵のものである、この個人の尊厳を重んじるということは、こういう不可侵の人格というものを尊重するということでございまして、憲法の基本的人権と同意、同義であると解しておるところでございます。

 教育におきまして、こうした個人の尊厳を重んじることは、憲法の精神にのっとった普遍的なものとして、今後とも大変重要な理念であるというふうに考えておりまして、現行法に引き続きまして、今回の法案にも規定したところでございます。

○斉藤(鉄)委員 民主党案におきましては、個人という言葉ではなくて、人間の尊厳とございます。我々が目指す教育は人間の尊厳と平和を重んじ生命の尊さを知り云々でございます。ここで、現行法にあります個人という言葉ではなくて、人間という言葉を使われた理由は何なんでしょうか。

○藤村議員 今ちょっと読んでいただきましたとおり、実は私ども、前文に人間の育成はという言葉を三カ所使っておりまして、人間という言葉に少しこだわりました。

 といいますのも、我々の日本国教育基本法において、前文というのは、非常に普遍的な、人間の育成、人づくりということになるかもしれませんが、という非常に大きな意味の、つまり教育は何かということの理念を書き込んだつもりでございます。そういう意味で、前文第一行の下の方に、広義の教育の力によってという言い方をいたしました。条文以下は、ある意味では、国及び地方公共団体などの、その意味では一部の教育を規定しているんですが、前文だけは特に人間の育成ということにこだわったものですから、人間の尊厳という言葉にある程度こだわってきたところでございます。

 なお、第一条、目的のところでは、我々は、人材という言葉を使いました。これは、一人一人の人間を育てる理念のもとに、国や地方公共団体が行う教育部分の役割、すなわち、狭い意味、狭義の教育についての目的にしたところでございます。

 また、これは我々が前から主張しておりますが、教育基本法というのがやはり憲法に準ずるし、あるいは憲法と連携したものでなければならないという主張はずっとしてきたところでございますが、昨年十月に我々民主党は憲法提言というのを出しました。ここに人間の尊厳ということを非常に前面に出してうたっている関係もございまして、今後のことを考えれば、やはり人間の尊厳。個人というのは、国、社会、個人という対比で言うわけですが、我々はあくまで人間ということに焦点を当てた、この辺が一つの特徴だと思います。

○斉藤(鉄)委員 今の藤村さんの御説明、わからないわけでもない、人間の尊厳という言葉も非常にすばらしい言葉だと思いますが、憲法そして現行教育基本法における個の尊厳というのは、ある意味で人類の歴史の中で生み出してきた一つの普遍的な価値としての個の尊厳という使われ方だと思うんです。教育の目的も、今回は人格の完成、これはある意味では個人に着目したもの、そして社会の形成者としての資質、これは社会に注目したもの、その両方相まって初めて教育の目的が達成される。そういう中にあって、人格の完成を目指す個の尊厳という普遍的な価値を前文にきちんと入れておくということは必要なことなのかな、私はこのように思っております。

 それから、今回いろいろな議論の中で、個人の尊厳とか、今の憲法また現行教育基本法について個のということがたくさん言われているけれども、いわゆる社会的責任という言葉が少ないのではないかというような議論もございましたが、基本的に、憲法もそして教育基本法も、名あて人はやはり国家であり統治機構だと思います。その権力に対して、これ以上のことはしてはいけませんよ、できることはここまでですよということを書いてあるのが憲法であり、また教育基本法の基本的な性格だ、このように思いますので、憲法や教育基本法の中に個の尊厳ということがたくさん出てくるのは自然なことだ、私自身はこのように考えております。

 次に、第五条、義務教育について質問をさせていただきます。

 現行の第四条は、本当に簡単にしか書いていないわけです。「国民は、その保護する子女に、九年の普通教育を受けさせる義務を負う。」「国又は地方公共団体の設置する学校における義務教育については、授業料は、これを徴収しない。」ということだけが書いてございますが、今回、政府案におきましても民主党案におきましても、では義務教育で何をやるのかということが書かれている。これは、私は、ぜひ今回の改正の一つの大きなポイントで、なさねばならないことだと思っております。

 この新しい教育基本法の案に義務教育の目的が規定されました。この規定を受けて、今後関係法令の整備が必要である、このように考えますが、大臣の御所見を伺います。

○小坂国務大臣 御指摘のとおり、今回の改定によりまして、「義務教育として行われる普通教育は、各個人の有する能力を伸ばしつつ社会において自立的に生きる基礎を培い、また、国家及び社会の形成者として必要とされる基本的な資質を養うことを目的として行われるものとする。」このようにされまして、中央教育審議会答申にありました「新しい時代の義務教育を創造する」というこのタイトルのもとに、国は、義務教育の到達目標を明確にし、その質の保証、向上を図ることが必要である、こういう提言をいただいたところでございまして、本法案において、教育の目標や義務教育の目的が規定されることを踏まえまして、今後、学校教育法等の関係法令の見直しに着手をし、その内容の検討を進めてまいりたいと存じます。

○斉藤(鉄)委員 今回、自立的に生きる基礎を培う、これが一つ。もう一つは、国家及び社会の形成者として必要とされる基本的な資質を養う、これが二つ目。そういうものを具体的に実行するための法制度の整備、これは必要だと思いますので、よろしくお願いいたします。

 現行法には、先ほど読み上げましたように、「九年の普通教育を受けさせる義務を負う。」というのが書いてございますが、案には、九年、そういう具体的な年数が盛り込まれておりません。どのような考え方に基づいて規定しなかったのか。これは民主党案についても書いてございません。なぜ書かなかったのか、これを文部科学省と民主党にお聞きいたします。

○田中政府参考人 義務教育の年限についてのお尋ねでございますけれども、教育基本法が制定されたときにおきましては、まさに戦後の学制改革の中で、義務教育の年限を六年から九年に延長することが喫緊かつ重大な課題だったところでございますが、その後の社会変化等を踏まえまして、義務教育に求められる内容も変化しておりまして、その年限の延長も検討課題の一つとして指摘されている、このような状況の中で、義務教育の年限につきましては、時代の要請に迅速かつ柔軟に対応することができますよう、その始期、終期などとあわせまして、別の法律、すなわち学校教育法に規定することが適当ではないかというふうに考えたところでございます。

○高井議員 お答え申し上げます。

 政府の御答弁と重なる部分もありますけれども、民主党も同様に九年の年限を外しました。民主党案では、現行の義務教育の期間を高等教育にも幼児教育にも長くするということも考えに入れておるために、九年という文字を外したわけでございます。

 これは社会の変化に応じて弾力的な制度構築を可能とするためで、具体的には学校教育法で定めるということも政府と同じところでございます。

○斉藤(鉄)委員 法律の専門家からは、現行教育基本法の唯一の法律事項はこの九年のところだけだ、だから、それを外したらもう教育基本法の意味がないという意見もあったやに聞いておりますが、私は、政治の見識として今回これを外したのは非常に大きな意味がある、このように思います。

 大臣、そうしますと、今後、この九年間という数字、また六・三制についても弾力化する可能性があるのか。また、よく現場で、地元で聞くんですけれども、これは最近の幼保一元化の議論、認定こども園等の議論から、下の方に延ばしていくということの前ぶれですかとか、いろいろ質問を受けるんですが、この可能性についてどのようにお考えでしょうか。

○小坂国務大臣 これにつきましては、義務教育期間を九年より長くすることについて、平成十七年に実施した義務教育に関する意識調査によりますと、賛成する割合が全体としては低い形なんですね。賛成あるいはまあ賛成と回答した割合は、保護者で二四%、学校の評議員では一三%、一般教員で七%、校長、教頭が一〇%、教育長は八%、あるいは首長さんの関係では一一%、こうなっておりまして、低い結果となっております。

 一方、小学校の四、五年で発達上の段階にありながら小学校と中学校の間に学習指導や生活指導などの連携、接続の課題が指摘をされておりまして、このために、構造改革特区制度等を活用しまして、四・三・二制度など九年間の区切り方の新しい試みも一方でなされているところでございます。

 中央教育審議会答申、十七年の十月の答申におきましても、設置者の判断で九年制の義務教育諸学校を設置することの可能性など学校種間の連携、接続を改善するための仕組みを検討する必要があると提言されておりまして、具体的に、東京都内におきましても小中一貫校等の試みが見られるところでございます。

 義務教育の年限の延長や六・三制の弾力化というものは、学校制度の根幹にかかわるものでありまして、何よりも国民の幅広い理解を必要としている問題であるために、国民的な議論を踏まえて今後検討してまいりたい、このように考えるところでございます。

○斉藤(鉄)委員 現行憲法も六十年続きました。これから我々がつくろうとしている改正案も、五十年、六十年続くんだと思うんです。その間、義務教育は九年というふうに固定するのはいかがなものか。本当に国民の理解を得ながら、幅広い議論をして、その可能性を残しておくということは非常に重要なことだと思います。

 それから、この義務教育に関連いたしまして、憲法二十六条には、「すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。」このように書かれております。普通教育を受けさせる義務、ここで言う普通教育というのはどういう意味でしょうか。

○田中政府参考人 ここに規定しております普通教育というものは、国民全体に対して基礎的に必要とする知識を言うものでございます。

○斉藤(鉄)委員 基礎的知識とおっしゃいましたか。保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負う、これが義務教育と。先ほどの御答弁は、生きていく上で基礎的な知識を教えると。

○田中政府参考人 普通教育とは全国民に共通の一般的、基礎的な教育を言うものでございます。失礼しました。

○斉藤(鉄)委員 全国民共通の基礎的教育、必要な基礎的教育、それが普通教育であると。このように二つの、憲法の文章と今の御答弁を聞きますと、義務教育イコール普通教育、生きていく上で基礎的な教育ですからとなるんです。

 それでは、高等学校の役割というのは、高等学校も普通教育、普通科というのがございます。普通教育と職業教育の高等学校があるわけですけれども、高等学校の普通教育というのは義務教育ではありません。そのあたり、どうもしっくりすとんと来ないわけですけれども、この問題についてはちょっとまた議論したいと思いますが、では、高等学校の役割というのは何なのかという形でまず質問をさせていただきます。

○銭谷政府参考人 現在、学校教育法におきましては、高等学校は、高等普通教育及び専門教育を施すことを目的とする教育機関として位置づけられているわけでございます。

 新制高等学校発足直後は四〇%程度でございました高等学校の進学率は、現在九七%を超えておりまして、その実態はさまざまなものになっているかと存じます。高等学校自体は、義務教育の基礎の上に、これをさらに発展拡充させて、生徒がみずからのあり方や生き方を深く考え、各自の興味、関心、能力、適性、進路等に応じて選択した分野の学習を深め、将来の進路を決定させる教育段階というふうに現在は考えられるものだと思っております。

 その中で、各高等学校ごとに随分いろいろ性格が異なってきているというふうに思うわけでございます。今回、教育基本法の中で、学校教育の目的、目標といったものが新たに定められたわけでございますし、また、その教育基本法を受けた学校教育法の改正ということを今後私ども検討しなければならないわけでございますが、こういった高等学校の実態というものを踏まえつつ、高等学校の目標、目的の規定のあり方についてもよく検討していきたいというふうに考えているところでございます。

○斉藤(鉄)委員 憲法二十六条の文章、それから先ほど生涯学習局長が答えられた普通教育の意味、そして今回九年という義務教育の年限が外れたこと、そして普通教育ということが高等学校の規定の中にもある。それらを、今回の法改正を一つの契機にして全体整合性を持たせるような法体系にしていかなくてはいけないのではないかということを、今の質疑を通して感じたわけですけれども、現行下でもちょっとかなりの混乱がありますので、今回のこの法改正を、そういう意味で制度をすっきりさせる一つの契機にさせていきたいと強く感じたということを申し上げさせていただきまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。