平成18年5月30日 衆議院決算行政監視委員会


○斉藤(鉄)委員 公明党の斉藤鉄夫でございます。

 私は、きょう、旧日本軍が製造し中国大陸に遺棄してまいりました化学兵器、遺棄化学兵器の問題について質問をさせていただきます。

 私がこの問題に関心を持ちましたのは、旧軍が毒ガス兵器をつくった、そのほとんどが、私が住んでおります広島県でつくられておりました。瀬戸内海に浮かぶ小さな島、大久野島という島がその工場だったんですが、第二次世界大戦が終わるまでは、その大久野島は地図に載っておりませんでした。また、本土側を海岸線を呉線が走っているんですけれども、当時、この大久野島に近づくと、呉線を走っている列車、車内で放送があって、皆、窓側のカーテンといいましょうかシャッターを全部おろすようにということで、一般国民からもその大久野島、陸から見えるんですけれども、一切見えないようにということで、それだけ戦略上重要なところだったんだと思います。そういう島が広島にありまして、私もこの問題に関心を持つようになりました。

 終戦時、一説には百万発とも二百万発とも言われておりますが、そういう化学兵器が中国大陸に行って、戦争が終わった。その遺棄化学兵器の処理、これは戦後長らく放置をされてきたわけですけれども、化学兵器禁止条約によりまして、生産国がその処理の責任を負うということになり、日本もその条約に署名をいたしましたので、日本がその処理を行わなければならない、今こういう立場にあるわけでございます。

 一部に、終戦時にそれはもう中国側もしくは参戦してきたソ連軍に撤収をされたものであるから、日本には責任がないという説もございますけれども、そういうことをおっしゃる方もいらっしゃいますが、化学兵器禁止条約によって、日本はその責任を負うということを調印したわけでございますので、ここは日本が責任を持って対処をしなくてはいけない、このように思っております。

 中国大陸広く分布していた遺棄化学兵器、これは中国側の努力で終戦時に一カ所に、全部ではありませんけれども、かなり多くの部分が吉林省のハルバ嶺というところに集められて地下に埋められているということで、私も八年前にそれを見てまいりました。

 この中国遺棄化学兵器の処理は、その後、内閣府の中に遺棄化学兵器処理対策室ができて、進んでいる、このように聞いておりますが、経緯、現状、予算がどのぐらいなのか、また今後の予定、そして今抱えている課題等あると思いますので、このことについてまずお伺いをいたします。

○高松政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国は、今先生御指摘のとおり、化学兵器禁止条約に基づきまして、中国に存在しております、旧軍により遺棄されました化学兵器を廃棄する義務を負っているところでございます。

 遺棄化学兵器の大部分は吉林省ハルバ嶺に埋設されていると推定しております。推定埋設数は三十から四十万発と考えております。また、ハルバ嶺以外の中国各地におきましても、遺棄化学兵器が種々発見されておりまして、日本政府は、平成十二年の黒竜江省北安市以来、発掘回収事業の実績を重ねまして、これまでに計十回事業を実施し、約三・七万発を発掘回収しております。

 本事業に係る予算につきましては、平成十六年までの予算執行額は三百十五億円、平成十七年度予算額、これは補正後でございますが約百九億円、平成十八年度予算額につきましては約百七十七億円をつけていただいております。

 現在、中国各地で発見されております個別の、個別と申しますか少数の遺棄化学兵器の発掘回収事業を取り進めるとともに、最も多くの遺棄化学兵器が埋設されております吉林省のハルバ嶺におきまして処理事業を推進することが非常に重要と考えておりまして、安全や環境に十分な配慮を払いつつ、また中国の法律を遵守して、廃棄技術や、廃棄処理施設の立地場所、またその基本設計等について日中間で鋭意検討を進めております。特に、ハルバ嶺におきまして処理事業を実施するために、中国での事業主体といったものを日中政府間で合意する必要がございまして、現在、中国側との折衝を鋭意進めているところでございます。

○斉藤(鉄)委員 聞くところによりますと、どういう技術を選ぶか、またそのやり方等によって、数千億円から兆というオーダーまで最終的にはかかるという話も聞いております。そういう意味では、中国側の理解を得ながら合理的な方法でやることが必要だ、このように思いますので、その点について、またぜひ御努力をいただきたいと思います。

 もう一つ問題は、このハルバ嶺に全部集められているわけではありません、まだいろいろなところに残っております。そういう野原に遺棄された化学兵器に地域の住民の方が近づいて、毒ガスとは知らないわけですから、それを持ち運んだり、また子供たちがそれをつついて遊ぶということで、多くの人が被害に遭っております。

 二〇〇四年には、いわゆる敦化事件ということで、子供たちが河原に突き刺さっていた毒ガス弾をつついて遊んで、傷ついて、今も苦しんでいる。また、二〇〇三年には、いわゆるチチハル事件、これは、亡くなった方もいらっしゃいますし、子供を含めた四十三人の方が障害を負って現在も苦しんでいらっしゃるという問題がございます。

 このような、処理の問題とは別の地域住民の方の被害について、日本政府はどのような対応をとっているんでしょうか。

○佐渡島政府参考人 お答え申し上げます。

 今御指摘のございました黒竜江省のチチハル市の事件、それから、吉林省の敦化市の、旧軍によります遺棄化学兵器による毒ガス事故が発生したこと、これにつきましては、政府として極めて遺憾であると考えております。被害者の方々に対しては、心からお見舞いを申し上げてきておるところでございます。

 これらの事故に関しまして、我が国としては、中国側と密接に協力をしながら、中国側から事故の通報があった直後から、まず事実関係の調査チーム、それから本件事故の被害をもたらしましたドラム缶それから砲弾をこん包するためのチーム、それと医療専門家チームを派遣する等、迅速かつ誠実な対応を最大限行っております。

 また、このような毒ガス事故の発生も踏まえまして、今後、遺棄化学兵器の処理を実施していく中で中国人及び日本人の関係者が万が一事故の被害に遭う場合を想定いたしまして、これに迅速かつ適切な対応がとれますよう、現在、中国におきます遺棄化学兵器処理事業の一環といたしまして、医療体制の確立ということについて日中間の専門家で検討をしております。今のところ、手元にあります資料によりますと、既に計六回にわたって医療専門家同士の話し合いをしております。

 我が国といたしましては、今後、このような被害が生じないようにするためにも、一番の根本的な解決策というのはやはり事業を早く完結することだと心得ております。化学兵器の禁止条約に基づきまして、できるだけ早く処理をするために、今、内閣府の方からも紹介がございましたけれども、中国側と緊密に協力をしながら対応を図っていきたいと考えております。

○斉藤(鉄)委員 遺棄化学兵器の処理、また、処理に伴って負傷される方、それから、処理とは関係なく、野原に捨てられた化学兵器に何らかの原因で接して負傷される方、それぞれに対しての救済スキームというのは、これは日本軍がつくった化学兵器による被害ですので、日本政府としてきちっとした対応をすることが非常に重要だ、私はこのように思います。

 日本での毒ガス被害者、これは、例えば大久野島で働いていた方が被害を受けて、今もたくさんの、二千人以上の方が苦しんでいらっしゃいますけれども、その方々にはいわゆる被爆者援護法に準用した援護手当が施されております。まさに健康手当等、被爆者援護法と全く同じものが施されているわけです。

 被爆者援護法におきましては、在外被爆者、海外にいらっしゃる被爆者についても、それに準じて救済の手を、援護の手を差し伸べていこうという動きに今なっているわけでございまして、同じような考え方で、海外で旧日本軍の毒ガスによって傷ついた方に対して、日本の毒ガス被害者を救済しているスキームを適用して救っていくということも今後考えていくべきではないか、このように思いますが、これについてはいかがでございましょうか。

○岡島政府参考人 まず、私の方からは、日本におきます毒ガス障害者対策につきましてお答え申し上げます。

 第二次大戦中、広島県大久野島にありました旧陸軍造兵廠忠海製造所、福岡県北九州市にありました旧陸軍造兵廠曽根製造所、神奈川県寒川町にありました旧相模海軍工廠におきまして毒ガス製造等に従事した方のうち、毒ガスによる健康被害を有する方に対しましては、健康診断の実施、医療費及び各種手当の支給などの措置が講じられているところでございます。

 このうち、厚生労働省におきましては、動員学徒等、国との雇用関係に基づかない方を対象としておりまして、対象者の数は平成十七年三月末現在で二千四百八十六名となっているところでございます。

○佐渡島政府参考人 お答えを申し上げます。

 政府としての考え方ということでございますけれども、日本政府、日本と中国、大陸との間では、一九七二年に日中共同声明が発出をされておりまして、それに、さきの大戦に係る請求権の問題というのは存在していない、こういう仕切りになっております。したがって、被害者個人に対する補償とか、あるいはその代替措置ということに関しては、この法律の仕切りに従うというのが基本中の基本ではないかと心得ております。

○斉藤(鉄)委員 在外被爆者の場合におきまして、いわゆる被爆者援護法が、これは最高裁判決の言葉ですが、国家補償的な配慮によるものであるという理論的なバックグラウンドがございます。この国家補償的配慮によって、被爆者には援護の手が差し伸べられている。そして在外被爆者にも、これは、ある意味では社会保障としては考えられない、外にいる人に対しての援護の手ですから、これも国家補償的な配慮という論理を使わなければ当然できないわけですけれども、それが被爆者の場合は行われている。

 国内の毒ガス被害者については、この被爆者援護法と同等の援護措置が行われている。これは最高裁判決はありませんけれども、当然これは国家補償的な考え方によるものだと思います。その論理の延長線からいけば、外にいらっしゃる毒ガス被害者についても援護の手が差し伸べられるべきではないか、私はこのように考えております。

 時間が来ましたので、きょうはここで終わりますけれども、今後ぜひ、我々の先輩がやったことでございますので、その責任は我々がきちんととらなくてはいけない、こういう趣旨から、またこの問題を取り上げさせていただきます。

 ありがとうございました。