平成18年4月28日 衆議院本会議


○斉藤鉄夫君 公明党の斉藤鉄夫です。

 私は、公明党を代表して、建築物の安全性の確保を図るための建築基準法等の一部を改正する法律案について質問をさせていただきます。(拍手)

 まず初めに、建築という行為と公の関係についてお伺いします。

 建物を設計し、建築し、販売するという行為と、自動車を設計し、製造し、販売するという行為を比べてみます。ともに国民の生命、安全にかかわり、かつ対価もかなり大きな経済行為であります。しかし、自動車の場合、道路運送車両法という法律で、最終的な製品が満たすべき性能の基準が規定されているだけです。だれが設計しようと製造しようと自由です。最終商品の衝突破壊実験などによって、安全基準を満たしていることが証明されればいいわけです。

 建築の場合、自動車と違って、まず、計画、設計には国家資格が必要です。その計画、設計がもろもろの基準を満足しているかどうかの公、行政のチェックである建築確認があり、施工も、建設業法で規定された者が行います。そして、行政による中間検査、完了検査もあります。建築の場合、公の関与が他の経済行為と比べて極めて多いと言えます。

 このような現状に対し、一部の建築家や学者の間に、建築法制を根本的に改めて、行政と専門家の責任を明確に区分したらどうかという提言があります。つまり、公、行政は集団規定のみを行う、別な言葉で言うと、建築物をどこにどれくらいの高さ、大きさで、どんな形なら建ててもいいといった都市計画に関する規定のみを行い、個別の建築物の設計については、自動車の場合と同様に、性能評価としての単体規定として専門家である設計者にゆだね、全責任を負わせる、こういう提案でございます。

 もちろん、建築専門家の責任といっても力に限りがありますので、保険制度等の組み合わせが必要になってきますが、いずれにせよ、建築における行政と専門家の責任を明確にして、公の関与を少なくしようという問題提起と考えます。

 このような提案が建築家からなされるほど、現状は公の関与が強いことの基本的な理由はどこにあると考えていらっしゃるのか、また、公的責任は集団規定だけでいいのではないかという問いかけに対する国土交通大臣のお考えをお聞きいたします。

 ある建築設計が妥当かどうかを第三者がチェックする場合、その設計者が行った構造計算などの設計行為をそのままなぞってみても余り意味がないのではないかという専門家の意見も多く聞きました。それよりも、同等の力を持った専門家が、例えば大きな机に図面を広げて建築全体の構成をじっくり頭に入れ、その後にポイントになる部分について、例えば壁厚とか柱の太さ、鉄筋量をチェックする、不審な部分があれば設計者と議論するという、いわゆる仲間、ピアによるチェック、ピアチェックの方がはるかに第三者審査の機能を果たすと言われております。この場合、同じコンピューター計算を二度繰り返すわけではありません。

 今回、構造計算適合性判定機関において同じ計算をもう一度行うということですが、屋上屋を重ねることにならないか、社会に余分な負担を課すことにならないかという懸念があります。このような指摘に対する御見解と、ピアチェックこそ第三者による確認の主体にすべきではないかとの意見に対する御見解を国土交通大臣にお聞きいたします。

 次に、建築士制度についてお伺いします。

 建築設計と一口に言っても、中身は、いわゆる意匠、構造、設備に分かれ、その中でも細分化が進んでいると聞きます。一人の設計者がすべての分野に精通するということはなかなか難しい現状の中で、元請と下請設計に分かれてくる。意匠系が全体を見て、構造、設備がその下で設計をするという仕組みが多いそうです。これは、技術が高度化してくればいたし方ないことと思いますが、それであるならば、それぞれの設計者の資格と名前が表に出て明らかにされること、そして責任の明確化が必要になってくると考えます。専門分野別の資格をつくった方がいい、元請設計者の責任を明確にした方がいいと考えますが、この点についての大臣のお考えをお聞きいたします。

 これに関連し、建築士とは別に技術士という国家資格制度があります。建設部門もあり、優秀な建築関係者の多くがこの資格を有しております。この資格取得には、いわゆる技術者倫理というものもその審査内容に入っており、個人、組織の利益より社会の利益を優先させるという考え方に基づいた制度です。

 この技術士制度を今後の建築法制の中に生かせないか、技術士の建設部門と一級建築士の相互乗り入れなどが建築士の世界の倫理向上に役立つのではないかと考えますが、大臣のお考えをお伺いいたします。

 最後に、住宅の購入者等の保護を図るための瑕疵担保責任制度の導入について質問いたします。

 設計者また施工者としての責任は、建築士法及び建設業法によって法律で規定されております。であるならば、その責任の明確化と、それを資金的に裏づけ、保証する保険制度の拡充は必要不可欠と考えます。今回、社会資本整備審議会建築分科会の中間報告においても、住宅の購入者等の保護のため、施工者、売り主の瑕疵担保責任保険への加入や、設計者の損害賠償保険への加入の必要性について指摘しております。これは、官と民の責任、役割分担を明確にする上で避けて通れない過程だと思います。今回の法改正において、保険への加入義務化を見送っておりますが、この問題についての大臣の御見解を伺います。

 戦後間もなくつくられた建築確認制度や建築士制度が時代や技術の大きな変化、進歩に対応できてこなかったのも、今回の事件の背景かもしれません。事件の再発防止のみではなく、今後目指すべき日本の建築法制、制度のあり方、行政、民間のそれぞれの責任と役割の明確化、そして、安心、安全に暮らすことのできる社会のあり方を総合的に検討する機会にすべきと訴えて、私の質問を終わります。(拍手)

    〔国務大臣北側一雄君登壇〕

○国務大臣(北側一雄君) 斉藤議員にお答えいたします。

 建築物の建築における公的関与、公的責任についてのお尋ねがございました。

 建築物を建築、購入しようとする際には、ほかの財と比べまして非常に多額の費用を要します。加えて、構造、防火、避難などの安全性能等について、竣工した後に欠陥が見つかった場合に、それを改修しようとすれば大きな損失を伴うこととなり、建築物については竣工時点で必要な性能が確実に確保されていることが求められます。

 このため、現在の制度では、建築士法において、専門的知見を有する資格者のみが設計を行うことができることとするとともに、建築基準法において最低基準を定め、行政側が当該基準への適合性を確認することとしているものでございます。したがって、国民の生命、健康及び財産の保護を図るためには、集団規定だけではなくて、単体規定についても、確認検査により基準適合性を担保する必要があると考えております。

 次に、構造計算適合性判定機関による審査の必要性についてお尋ねがございました。

 今回の偽装物件の偽装内容には、コンピューターによる計算途中の数値の改ざんなど巧妙なものもあり、偽装を確実に見抜くためには、構造計算の過程等の詳細な審査や再計算を行うことが不可欠でございます。このため、今回の改正案では、建築主事等が行う審査に加え、構造の専門家である判定員を有する公正中立な第三者機関において構造計算の過程等の詳細な審査や再計算を実施することにより、その適法性のチェックを行うこととしたものでございます。

 なお、第三者機関ではなくて民間の専門家同士によるピアチェックにつきましては、公正中立な審査が行われたかどうか、十分な能力を持つ者により適切に審査が行われたかどうかなどを確認することが容易でないと考えております。

 専門分野別の資格、元請設計者の責任の明確化についてお尋ねがございました。

 専門分野別の資格を設けることや元請設計者の責任を明確化することは、建築士制度に係る大変重要な課題であると認識をしております。これらの課題につきましては、社会資本整備審議会建築分科会において引き続き現在審議をいただいておりまして、夏ごろまでには方針を取りまとめていただき、それを踏まえて所要の見直しを行っていく方針でございます。

 技術士制度を生かした建築士の技術者倫理の向上についてお尋ねがございました。

 御指摘の技術士の建設部門については、都市計画や道路、港湾、鉄道などを初めとする土木施設の配置計画、施設設計を主な職務としております。一方、建築士については、建築物の間取りや意匠などの計画、躯体構造の耐震性の確保など、建築物の総合的な設計を職務とするものであり、技術士とは技術の対象範囲が異なるものと認識をしております。

 しかしながら、技術士制度は、その試験内容に技術者倫理に関する事項が含められているなど、資格者に高い職業倫理を求めようとする姿勢を有しております。この建築士制度の見直しに当たりましては、ぜひ参考にさせていただきたいと考えております。

 保険への加入の必要性についての考え方についてお尋ねがございました。

 本法案におきましては、住宅の売り主等に対して、保険への加入の有無など瑕疵担保責任の履行に関する情報の開示を義務づけることとしております。また、設計事務所についても同様に、保険への加入に関する情報の開示を義務づけることとしております。

 情報の開示からさらに進んで、保険への加入など瑕疵担保責任の履行確保措置を義務づけることについては、被害者救済に必要な保険金の支払いが安定的に確保されるのかどうか、また、故意、重過失によって瑕疵が生じた場合の取り扱いをどうするのか等々の多くの課題が存するところでございます。このため、各方面から御意見をよく伺い、検討を進めるため、有識者の参画を得まして、住宅瑕疵担保責任研究会を設置し、先日の四月十八日に第一回の研究会を開催したところでございます。今後、関係機関とも連携を図りながら、夏ごろまでには基本的な方向性を取りまとめたいと考えております。

 いずれにしましても、瑕疵担保責任の履行の実効性を図ることは極めて重要な課題と認識をしておるところでございます。(拍手)