平成18年2月6日 衆議院予算委員会

○斉藤(鉄)委員 公明党の斉藤鉄夫でございます。

 私は、耐震偽装問題、この一点に的を絞りまして質問をさせていただきます。

 北側国土交通大臣は、この偽装問題発覚直後、ちょうど公務、海外出張中でしたけれども、即座に中断し、帰国されました。そして、居住者、周辺地域住民の安全確保の観点から、住民移転対策、また除却、いわゆる取り壊し、除去命令等、いち早く指示をされました。一方、これは建築確認という公の事務に関することだ、純然たる民民の関係だというわけにはいかない、こういう行政責任を明確にした上で、公的支援策を打ち出しました。このスピーディーな対応は、住民の安全対策、また被害者の救済という面で高く評価されるべきだ、このように考えております。

 しかしながら、一方で、公的支援が手厚過ぎるのではないか、また、民民の問題なのではないかという批判があることも事実でございます。

 公の責任をどう考えるのか、また、公平性に問題はないのかということも含めまして、今回の対応についての基本的な政府の考え方をお伺いいたします。

○北側国務大臣 まず、今回の政府の支援策は、法律上、民事上の責任に基づくものというものではありません。あくまで、極めて必要性が高いというふうに行政が判断いたしまして、このような支援策をつくらせていただいたわけでございます。

 念頭にございますのは、分譲マンションの中の特に危険な分譲マンション、今十棟ございます。この十棟につきましては耐震度が〇・五を切っておりまして、震度五強の地震がありますと倒壊のおそれもある、そのような非常に危険なマンションでございます。この十棟に二百八十八戸、二百八十八世帯の方々がお住まいなわけでございます。ともかく、この危険な分譲マンションの居住者の方々の居住の安全を確保していく、また居住の安定を確保していく、これが最優先というふうに私ども判断させていただきました。

 それからもう一つは、ほかの、ホテルだとか賃貸マンションもございます。そことの一番大きな違いは、分譲マンションの居住者の方々には、このような危険な建物ができたことについては何らの責任がございません。ホテルや賃貸マンションの場合は、その方々自身が事業主、建築主として、そもそも施工者や設計者を選ぶことができる、そういう立場にあったわけです。そこに大きな違いがあると考えていますし、そもそも、住居という生活の本拠であるかどうかということも大きな違いだと考えておるところでございます。

 それと、今おっしゃった今回の件に関しては、建築確認の時点で、それが指定検査機関であれ、これは特定行政庁の事務として公の事務でございます。そこにはやはり、これは責任があると申しているわけじゃありません、公の事務の関与があるわけでございます。

 そういうことを考えたときに、さらには、本来はこれは建築主である売り主が売り主責任として瑕疵担保責任をしっかり果たしてもらうことが当然のことでございますし、それが第一義的な責任を果たしてもらわなければいけないわけでございますが、それが果たせるような状況になっていないというふうなことも勘案して、そうした要素をさまざま総合的に判断して、行政としては緊急性、公益性の点等々を考えて、これはやはり行政が支援対策、それも総合的な支援対策をつくる必要があるというふうに考えて、さきの支援策をつくらせていただいたところでございます。

○斉藤(鉄)委員 今の大臣の御答弁をまとめますと、まず住民の安全とそれから居住の安定確保のため、とりあえず公の支援を行ったけれども、第一義的な責任は建築主、分譲マンションの場合はそれが売り主とイコールになるわけですが、建築主にあって、その点は論理として貫徹をしている、こういうことではないかと思います。

 その点に関連して、建築主たるヒューザーの小嶋社長が、十八の自治体や民間の確認検査機関を相手取って提訴を起こしました。何か大きな勘違いをされているんじゃないかと私自身思いますけれども、この点も含め、小嶋氏、姉歯氏、元請の設計事務所や確認検査機関、また施工会社などの関係者への責任追及についてどのような方針で臨まれるのか、国交大臣にお聞きいたします。

○北側国務大臣 今回の耐震偽装事件でございますけれども、一つは、耐震度という建物の安全性、基本にかかわるところを偽装した、そういう一級建築士がいたわけでございます。この一級建築士、そこに下請に出した元請の設計事務所があります。さらに、施工した方そして建築主とあるわけですね。

 建築主というのは、建物ができ上がるまでの全責任を負っているのが建築主でございます。それは、施工者であれ設計者であれ、それを選んでいるのは建築主ですから、建築主がその建物の安全性に対する全責任を負うのは当然のことでございます。

 一方、もう一つの問題は、今回、特定行政庁であれ指定検査機関であれ、建築確認という法令上の間違いがないかどうかチェックする側です。チェックする側に見落としがあった。これも重大な問題です。

 しかし、そもそも、建物をつくった人、建物の安全性に全責任を負っている建築主が、チェックする側の、あんたらがチェックをちゃんとできなかったから危険な建物ができたんだということを、例えば分譲マンションの居住者や第三者の方がおっしゃるのはわかりますが、建物の安全性について第一義的な全責任を負っている建築主が特定行政庁を訴えるというのは私には理解できないというふうに申し上げたわけでございます。

 その上で、当然、この支援策を実行していく前提としても、売り主に対する責任、ここはしっかりと私どもも厳正に求めてまいりたいというふうに考えているところでございますし、また行政処分としても、これは、ここに設計士とかさまざまかかわっていらっしゃいます、行政の処分もしっかりと厳正にさせていただきたい。

 もちろん、姉歯元建築士につきましては既に資格取り消しをいたしましたが、それだけではなくて、この姉歯元建築士に下請させた元請の設計事務所についても、もう既に資格取り消し処分を行ったところもございます。今後とも、事情聴取の上、厳正に処分を行ってまいりたいと考えているところでございます。

○斉藤(鉄)委員 私ども、全く同様に考えておりまして、しっかりと責任追及していっていただきたい、このように思います。

 国民の信頼を失った建築確認制度を再び信頼されるシステムにつくり直す必要がある、これがこれからの国会審議で最も大事な点ではないかと思います。この点について質問を進めていきます。

 平成十年に建築基準法の大改正がございました。建築基準法始まって以来の大改正、私も質問に立ちましたのでよく覚えておりますが、三つの大きな改正点がございました。

 一番大きな改正点は、いわゆる法律の基本的な性格を変える。それまでの仕様規定基準から性能規定基準に変える、これが一番大きな改定点。二番目が、お役所の建築主事さんが行っていた建築確認を民間にも開放した。この民間開放が二点目のポイント。そして三点目が中間検査の導入でございます。

 この一番目の、基本的な法律の性格を変えた。つまり、それまでは仕様規定ということでございまして、一つ一つ、使う材料とか寸法とか組み立て方だとか設計の仕方まで全部政令で定めて、そのとおりにやらなきゃいけない、これが仕様規定でございます。その仕様規定を改めて、性能規定にする。こういう性能が満足されていれば、そして、その性能が満足されているということが証明されれば自由な設計ができる、自由な材料が使える。この設計の自由度を増すというのが、仕様規定から性能規定への大きな変化だったわけでございます。

 この変化は、創意工夫や研究開発によって新しい材料をつくり出す、新しい工法をつくり出す、その技術開発を促す大きなインセンティブになった。したがって、こういう改革はしなくてはいけなかったと私自身思っておりますけれども、今回の偽装事件に関連しまして、この設計の自由化が今回の偽装の背景にあるのではないか、こういう声もあります。したがって、昔の、一々全部政令で定める仕様規定の世界に戻るべきだという極論もあるぐらいでございます。

 しかし、それは間違っている。全然レベルの違う二つの話を結びつけている。技術開発とそれに伴う創意工夫と偽装ということを結びつけてはいけない、このように考えますけれども、仕様規定から性能規定へ変わったということと今回の偽装問題、この関連について確認しておきたいと思いますが、国土交通大臣、いかがでしょうか。

○北側国務大臣 大切なことは性能でございます。仕様が大事なのではなくて、その仕様によって確保していこうとする性能が大事なわけであって、おっしゃったとおり、平成十年の改正では、むしろ規定そのものを性能規定化させていただいたわけです。その背景としては、技術開発をしっかり進めていただいて、多様な材料や設備等々によって性能を保つということでいいというふうに判断したわけでございます。

 大事なことは、その性能がきちんと保たれているかどうかという検証がきちんとなされること、それは法律の中にも規定をさせていただいているわけでございます。

 今回の事件との関連は全くないと私も考えております。今回の事件は、一級建築士という国家資格の与えられた、建物の安全性について一番責任を持って担ってもらわないといけない一級建築士が、故意で、悪意で偽装する、そういう事件が起こるとは想定もしていなかったわけでございますが、今後はそういうことも想定をしないといけないわけでございますけれども、こうした一級建築士が故意に偽装を行って、そしてなおかつ、指定検査機関または特定行政庁がその偽装を見抜けなかったというところに重大な大きな問題があるわけでございまして、しっかりその実態というものを点検させていただいて、建築基準法等の見直しをさせていただきたいと考えております。

○斉藤(鉄)委員 それでは、具体的な制度の改革について質問させていただきます。

 これまでは、先ほど大臣がおっしゃったように、国家資格である建築士を基本的には信用して、建築確認では、構造計算についてその入り口、出口だけをチェックする。同じ計算を二回やるということはしなかったわけです。しかし、今回は、国家資格を持っていながら悪意の偽装をする信用できない建築士がいるということがわかったわけでございます。

 この悪意の偽装を確実に防ぐには、第三者が同じ計算プログラムで同じ計算をやってチェックするしかありません。建築士を信用しないという前提に立ってダブルチェックするしかないということになります。

 私も技術者出身です。技術者として甚だ情けない話でございますけれども、地に落ちた建築確認制度の信頼を取り戻すにはこれしかないのかなという思いがございます。

 しかし、よくよく考えますと、ほとんどが善良である技術者であることを考えれば、この二重手間の冗長性というのは、将来、社会への大きな負担になってくるということも確かでございます。

 技術士という制度、国家資格があります。登録者が全国で五万六千人余という少なさ、その少なさゆえに余り世間に知られておりませんが、この技術士資格には倫理規定がございます。技術者倫理の講義も受けなければなりません。

 建築士についても、この技術士制度と同様に倫理規定を盛り込んで、いずれ将来、技術者倫理を柱とした合理的な建築士制度、建築確認制度を目指すべきだ、このように思います。

 今回、建築士を信用しないという前提のもとに立った改革はとりあえずいたし方ないかと思いますけれども、大きな改革について国交大臣のお考えをお聞きいたします。

○北側国務大臣 委員、建築士の方々を信用しないというわけではございません。一級建築士の方というのはたくさんいらっしゃるんですね。今回の姉歯元建築士のようなとんでもない、故意で、悪意で偽装していく人、こういう人が世の中にたくさんいるとは全く思っておりません。もちろんしっかりと調査はさせていただきますが。ですから、信用しないわけではございません。

 ただ、一定の建物については、やはり構造部分、建物の安全性にかかわる一番大事な部分、ここは二重チェックということを第三者の専門家の方々がチェックしていく、そういうことも検討すべきじゃないかということで、今、社会資本整備審議会で御議論をいただいているところでございます。すべての建物について再チェック、再計算をしていこうということではありません。一定の建物に限ってやっていこうということで進めているところでございます。

 それから、倫理の話がございました。私は、建築士法についても、この際しっかりと見直しをさせていただきたいと思っているんです。

 建築士会、建築士事務所協会と二つあるんですが、実はこれは強制加入じゃないんですね。任意の加入になっております。例えばほかの、弁護士会とか税理士会とかあるわけですが、これは強制加入です。会でさまざまな自治として、懲戒等々、倫理の規律等々、そういうことを会としてしっかりとやっていただいておるんですね。私は、そうした他の制度なんかもしっかり参考にしながら、建築士の団体についても、団体としてしっかり、職業倫理といいますか、そういうことが維持できるような啓発、教育また懲戒等々をやってもらえるようなシステムを考えていただく必要があるんじゃないか。この点についても、今、社会資本整備審議会で御議論をいただいているところでございます。

○斉藤(鉄)委員 構造設計者の地位の問題、これもよく我々もヒアリングの中で聞きます。

 建築設計の中に意匠設計と構造設計があって、本来であれば、同じ立場で意見を調整しながら一つの設計をつくっていくというのが理想ですけれども、意匠設計の方が優位にあって、構造設計は縁の下の力持ち的な存在である。

 したがって、一級建築士が百二万人いても、構造計算できる建築士は二万人程度しかいない、それは、地位が低く報酬も少ないからだ、こういう話がありますが、その構造設計の方々の名前が表に出て社会的責任も明確になる、そして報酬も確実に上がっていくという地位の向上こそ、構造設計者の数をふやし、構造設計の安定性、信頼性を増していくことにつながるのではないかという意見がございますが、この点についてはいかがでしょうか。

○北側国務大臣 その点につきましても、斉藤議員のおっしゃっているとおりだと考えております。

 建築士と言われても、いろいろな種類の建築士がいらっしゃいます。大きくは、意匠、そして構造、さらには設備とあるわけでございますけれども、そうした設計士、一つの建物ができ上がるに当たって関与した設計士については、例えば建築確認申請書等々、設計図書を見ればすべてその設計士が明らかになっていると、責任の所在は明確にしなきゃならないと思います。

 そういう意味で、氏名が公表されるように明示をしていく必要があると思いますし、また、今後は、さまざま行政処分等をやった場合についても、その処分された建築士については名前も公表させていただくというふうな形で明らかにさせていただきたいと思いますし、また、今、建築基準法等の見直しをやっていますが、罰則の強化等についても、今まさしく議論させていただいているところでございます。

○斉藤(鉄)委員 国交大臣にもう一問。

 欧米では、建築主と契約した保険会社が検査をする。この検査は、いわゆる確認検査、今の日本で言う民間機関がやっている、もしくは特定行政庁がやっている確認検査だけではなく、施工上の、例えば溶接ですとか鉄筋の接合部ですとか、そういうところがきちんと施工されているか、安全にとって最もクリティカルなところです。そういう検査も含めて、施工の第三者検査性を上げるという意味で保険会社を組ませて、トータルとして建築主の瑕疵担保責任をバックアップしている、こういうシステムが普及しているそうですが、日本について、このようなシステムを目指すべきというふうにお考えでしょうか。

○北側国務大臣 今回の事件の一つの問題点がそこにあると考えております。

 瑕疵担保責任、売り主は買い主の方に対して無過失の瑕疵担保責任を負っています。責任を負っていても、財産がなければ補償ができません。瑕疵担保責任を実効化していくような措置をきっちりとっていく必要がある。

 その一つの手段として保険制度。今も保険制度はございます、住宅性能保証制度というのがあるわけでございますが、今使われているのは一三%、新築住宅で。まだまだ少ないわけでございます。やはり、これもすべてというわけにいかないかもしれませんが、ある一定の建物の売り主についてはこの保険に強制的に入っていただく、強制加入していただく、また、銀行等による保証をつけてもらう、そういう形で、建物を買われる消費者の方々を保護していくというような制度を私はしっかり検討しなければならないと思っておりまして、今、その点についても社会資本整備審議会で御議論をいただいているところでございます。

○斉藤(鉄)委員 最後に総理、今回の偽装問題、国民の安心、安全という面で大変大きな、国民の気持ちを揺るがしたものでございます。この問題についての総理の御決意をお聞きして、質問を終わります。

○小泉内閣総理大臣 ただいま、斉藤委員と北側大臣との質疑を通じまして、どういう改善策が必要か、しっかりと対話していかなきゃならない大事な問題だと考えております。

○斉藤(鉄)委員 終わります。