| 平成16年3月4日 衆議院憲法調査会 安全保障及び国際協力に関する調査小委員会 |
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○斉藤(鉄)小委員 公明党の斉藤鉄夫です。 ツェプターさん、きょうは本当にありがとうございました。 早速質問させていただきます。 EUの統合が、私たちが考えていたよりもはるかに速いスピードで、そしてまた、私のヨーロッパの友人の言葉をかりますと、自分たちが予想していたよりもはるかに速いスピードで進んだ、このように認識しておりますし、見えるわけですけれども、その大きな要因は何だったのかということを、まず最初にお伺いしたいと思います。 ○ツェプター参考人(通訳) 大変おもしろい質問をしていただいてありがとうございます。ただ、今の御質問は、短いお答えはなかなかしにくい御質問だと思います。 なぜこのスピードが加速していったかということでありますが、私が思いますに、これは、歴史そのものの進展が非常にスピード速く進んだということが背景にありました。とりわけ欧州大陸という視点から見ますと、ベルリンの壁が崩壊したということ、そしてその後、ヨーロッパの政治経済の情勢も膨大な形で変化を見ました。 当初から明らかだったことは、ソ連邦の支配下に長年置かれていた国々も、熱心に経済発展を加速化したいというふうに考えているということのみならず、ヨーロッパの戦略あるいはヨーロッパの枠組みの中に統合されたいと熱心に関心を抱いているということでありました。すなわち、そのことによって政治的な安定化を図ろう、そして、長期的な視野から政治経済の安定化を図りたいという熱望があったかと思います。それがやはりスピード速く統合が進んだ一つの理由かもしれません。 こういった新しい国々が統合をされようという中で議論になったのは、EUの今現在の仕組み、構造、あるいは制度的な枠組みで、これから数多くなる加盟国に対応できるのかどうかという疑問でありました。明らかにその疑問に対する答えはノーでありました。すなわち、新しい課題に対して、今現在のEUの制度的枠組みだけでは対応し切れない、ですから、制度的枠組みを変えなければならないということが明らかになってきました。 それから、二つ目の点でありますが、経済統合を実行するということを選択した後、幾つかの問題が明らかになってきた。すなわち、幾つもの問題に対処しなければならないということがわかってきたわけであります。一つは、通貨統合あるいは単一通貨の問題であります。それから、もちろん政治的な問題ということも提起されてきました。 私の先ほどの意見陳述の中で述べましたように、統一市場ないしは共通通貨ということをつくってから、外交・安全保障政策は全く別個のものだ、これは重要ではないということは言えないということであります。ですから、論理の筋道をもとにたどって、そして経済統合を進めるならば、やはりそれに呼応する形で政治的にも対処していかなければならないということになりました。 ちょっと例を挙げてみましょう。御記憶かと思いますけれども、安定化協定並びにその適用というのは実は政治的な問題でありました。というのも、さまざまな経済政策を統合し融合させていくというのは、共同体の権限ではないということがあったわけであります。ユーロの進展が進む中で、やはり経済政策の調整をいかに図るかということが問題になってきました。とりわけ経済、ないしはマクロ経済政策と政治面での、政策の間のインターリンケージ、相互の関連性ということが重要になってきたわけです。 ○斉藤(鉄)小委員 ありがとうございました。 次に、ツェプターさんがきょうのお話の中で、「憲法草案は、その条項の多くにおいて、さらなる統合にとっての礎としてヨーロピアンアイデンティティーの必要性を強調しております。」と、ヨーロピアンアイデンティティーということをおっしゃっております。 我々も、日本の憲法を考えるときに、普遍性と、固有性というんでしょうか土着性というんでしょうか、二つのベクトルがありまして、普遍性を追い求めるべきか、いや、土着性を追い求めるべきかということで論争がございます。 ここでヨーロピアンアイデンティティーとおっしゃっておりますが、そもそもヨーロピアンアイデンティティーというのは何かということと、それは、我々が今お話ししたところの、固有の土着性というものに着目しないと憲法というのは余り意味をなさないんだ、こういう考え方に基づくものなのでしょうか、その点をお伺いします。 ○ツェプター参考人(通訳) まず初めに申し上げたいのは、EUを形成していくということを、より長期的な視点で考えるべきであるということであります。 すなわち、目先の経済的な利害のみを追い求めるのではなく、長期的な視点からEUを構築していこうという場合には、やはりこれは疑問の余地なく、必ずヨーロピアンアイデンティティーということを形成していかなければならないということがあるかと思います。人は、そのようなアイデンティティーがあってこそ、このヨーロッパの構築あるいはEUをつくり上げていこうという試みと自分を一体化させていく、同一視させていくということになるかと思います。 ですからこそ、私は、先ほどの陳述の中でも大いに強調をさせていただきました。すなわち、ボトムアップのプロセスが必要である、トップダウンであってはならない。すなわち、青写真ではなく、人々の意思によってどの方向に向かっていくのかということを決める必要があるのだということでした。 だからといって、ヨーロピアンアイデンティティーというのが、各国のそれぞれの国民のアイデンティティーに置きかわるものではないということであります。あくまでもヨーロピアンアイデンティティーというのは付加的な価値ということになります。ですから、両方を合わせて一体となるという考え方であります。 欧州大陸においては共通の歴史が見られるということは否定できないと思います。ですから、多くの面で共通性がある、あるいは、人々が結束する、団結するといったようなことが見られるかと思います、さまざまな政治的、経済的な進展の中で。それを明確にするということで、憲法の中でも大いに努力が行われて盛り込まれたということがあります。憲法の中でも、欧州の社会に共通に見られる具体的な価値観ということが重点的に盛り込まれております。 また、そのような視点から見ますと、ヨーロッパの形成のプロセスを確固としたものにするためには、やはり市民社会、シビルソサエティーというのが、いかにヨーロッパの進展の中に直接に参画するかということと、切っても切り離せない関係があるということであります。 ですから、意思決定のプロセスの中に市民社会を取り込んでいくということが、ヨーロッパの場合には深刻な問題として受けとめられておりますし、ですからこそ、欧州委員会が出しましたヨーロッパにおけるガバナンスについての白書の中でも、この点についてかなり苦労して記述されているということがあります。 我々は、やはり努力をして、市民社会が将来の意思決定プロセスの中に参画できるような仕組みをつくり上げていくということのみならず、市民社会の方も、ヨーロッパの社会に対してさまざまなアイデアを出してもらう触媒役を果たしていただきたいと思っております。 最後に申し上げたい点でありますが、ヨーロッパを構築していく中で、我々は、一方では共同作業として進めなければならないということがあると同時に、他方では、固有性、特異性ということも守っていかなければならない。ですから、欧州統合法の試みというのは、そういう意味でよい試金石になるのではないかと思っております。 ますますグローバル化が進む世界の中で、どのように、ドイツ人あるいはフランス人あるいはイタリア人としてのアイデンティティーを保ちつつ、同時にヨーロッパ人として自分が感じることができるのかという課題であります。私自身はこれを難しくは感じておりません。私はドイツ人でありますが、ババリア地方の出身でありますし、同時にドイツ人だと思っておりますし、ヨーロッパ人だとも認識しております。ですから、多層にわたるさまざまな層を、いかに重ね合わせていき、そしてそれを強化するかということが重要かと思います。 ○斉藤(鉄)小委員 ありがとうございました。 |