【衆議院文部科学委員会 平成15年4月2日】
○斉藤(鉄)委員 公明党の斉藤鉄夫です。よろしくお願いいたします。
教育基本法の議論に入る前に、先ほど岸田委員から話がございました外国人学校卒業生への大学受験資格付与の問題について、私も一問、大臣に質問させていただきたいと思います。
今回、当初、米英両国の三認定機関の認証を受けた外国人学校に大学受験の資格を付与するということでございました。一つの基準かとは思いますが、結果としてアジア系排除、そういうふうにもとれることになったわけでございまして、私どもも、ちょっとこれは考える必要があるのではないかということで、先日、幹事長の冬柴、政調会長の北側、そして私が、大臣に、もう一度考え直していただけないかということを直接申し入れたところでございます。
その申し入れに対しまして、私、大変な政治決断だったと思うんです。平成十四年度までに措置という閣議決定、ある意味ではこの閣議決定に違反をするわけですから、大臣としてはそうしたくなかった、そういう中で、あえて大決断をされて、白紙撤回でもう一度考え直すという決断をされたことは、我々の要望に対して深く、それを重く受けとめて考えていただいたということで大変感謝をし、評価をしているところでございますが、今回そのような大決断をされた大臣のお心、お考えについてお伺いをしたいと思います。
○遠山国務大臣 これは、先ほど政府参考人の方からお答えしましたように、日本の法体系の中で一定水準の教育を受けた者について考えるようにという、それをどこで確保するかということで、認証機関の認定を経たということは、私は極めて妥当な線であると思っております。したがいまして、白紙撤回ではなくて、それで対象にならなかったところを何か救う方法があるかどうかということを今後もう少し考えてみようということでございます。
したがいまして、一定水準の教育というものをどういうふうに考えていくかということを検討しなくてはなりませんので、やや時間がかかると思いますけれども、私といたしましては、やはり日本の学校制度の中での取り扱いでございますので、制度について論理的に説明ができる必要があるわけでございますし、しかもいろいろな御要望とも対応しながらやっていくということで、これからこの問題については検討を重ねてまいりたいというふうに思っております。
○斉藤(鉄)委員 先ほど岸田委員がおっしゃった今回の趣旨、これも大変大切だと思います。
また同時に、私も今回の件でいろいろな方とお話をしたんですが、例えば台湾系の中華学校などの方がおっしゃっていたんですが、台湾の高校を出たらそれだけで日本の大学の、留学という形になりますけれども、入学資格はあるわけでございます。日本の学校、本当にきちんとした学校で、実はその地域の日本人の方も、こんな言い方はちょっとよくないかもしれませんが、地域の公立高校に入れるよりその中華学校に入れた方がはるかにいい教育をしてくれるということで、日本人の子弟も大変たくさん通っている、そういう学校。しかし、その学校の卒業は大学受験資格がない。確かにこれはおかしい、本当に庶民の感覚としておかしいなということもございます。
その点、先ほどの岸田委員がおっしゃった本来の筋、これも大切ですし、またこういう一般的な国民が感ずる公平感ということも大切だと思いますので、どうかその点に配慮して、私も勉強しましたけれども、大変難しい問題だというのはよく承知しておりますけれども、今後よろしくお願いをいたします。
それでは次に、教育基本法の質問をさせていただきます。
今回のこの答申、読ませていただきました。教育改革国民会議以来、中教審で大変な議論がされてきたことについて敬意を表したいと思いますし、大変よくできた答申だと思います。
最初の「第一章 教育の課題と今後の教育の基本的方向について」というところをざっと読みますと、いろいろなことが書いてあるんですが、一つは、今教育に大変な問題がある、だから基本法を変えなきゃいけないんだ、それからもう一つは、この五十五年間大きく時代が変わった、だから基本法を変えなきゃいけないんだ、主にこの二つかと思うんです。
まず、今教育がここまで悪くなったから基本法を変えなきゃいけないんだという点についてですけれども、確かに教育の荒廃のことが書いてございます。いじめ、不登校、中途退学、学級崩壊などの深刻な問題、それから規範意識や道徳心、自律心の低下、凶悪犯罪の増加、学ぶ意欲の低下、こういう現在の教育が抱えている問題が書かれているんですが、私は、読んでみて、これが教育基本法と直接結びついているのがいま一つわからないんです。
教育基本法のここが悪いからこういう今の問題が起きているんだ、だから教育基本法を変えなきゃいけないんだ、こういう論理だったら非常にわかりやすいんですけれども、その最も大切な、今教育基本法のここに問題があるからこういう教育荒廃が起きているんだという点が私は明らかにされていないように思います。
その点、非常に重要だと思うんですが、この点についてはいかがでしょうか。
○遠山国務大臣 今委員が御指摘ございましたように、今日の日本の教育につきましては、関係者が非常に努力をしてくれておりまして、すぐれた成果を上げている面もあると思いますけれども、しかし、おっしゃいましたようないろいろな問題があるということも確かでございます。いじめの問題、不登校の問題あるいは学級崩壊、こういったことがこのままの状況でいってもなかなか改善できるというふうに見られない点もあるわけでございます。
同時に、特に規範意識、道徳心あるいは自律心の低下というあたりは、子供たちばかりではなくて大人の世界もそうだと思いますし、大人の生き方そのものが反映しているという面ももちろんあるわけでございます。同時に、学ぶことについての意欲の低下ということも非常に大きな問題だというふうに思っております。
そうした問題については、個々にいろいろ政策を打って、私どもも真剣に取り組んでおりますので、もちろんそういった政策も推進をしていくということは当然でございますけれども、同時に、そういった状況の背景にある、あるいは教育の根本のところといいますか、そこのところも見直していくことによって全体をさらによくしていく必要もあるのではないかという考えに基づいての諮問であり、また今回得た御結論ではないかと思うわけでございます。
いろいろな問題について対応していく個々の対応策のみならず、いわばその根本にさかのぼって教育のあり方というものをいま一度見直して、二十一世紀というものをしっかり生きていく子供たちにしていこうということにおいて、私は、今回の答申で示された幾つかのポイントというものは大変重要なポイントであるというふうに考えるところでございます。
したがいまして、今回出されたものは、教育基本法のすぐれた理念というものはベースにしながら、さらに加えて今後重視すべきいろいろな理念、原則というものをもう少し明確化しろという御答申であろうかというふうに考えているわけでございまして、その意味において、私は、大変意義のある答申であり、かつまた我々もそれを実現すべくこれから力を尽くしてまいりたい、そのような考え方でございます。
○斉藤(鉄)委員 いろいろな具体的な問題に対しては個々具体的な法律がある、しかしその具体的な法律の理念を今回の基本法でうたっているんだ、物すごく要約するとそういう御答弁だったかなと思いますが、今後その具体的な法律を変えていく、そのための理念が今回の基本法なんだ、そこの間の説明がいま一つ少ないのかなという気がします。一般国民としては、現在教育がこれだけ問題を抱えている、だから基本法を変えなきゃいけないんだ、これはよくわかるような気がするんです。ただ、その間をつなげる説明が、先ほどの大臣の御説明ではまだちょっとするっと落ちないなという気がしますので、この点もう少し議論していかなきゃいけないのかなと思っております。
もう一つ同じような問題なんですが、時代が大きく変化したと。「国内的、国際的な大きな変化の中で、国民の意識も変容を遂げ、教育において重視すべき理念も変化してきている。」だから基本法を変えなければならないという論理なんですが、これについても、先ほど大臣がお答えになりましたけれども、私は、同じようなことが言える、私の立場というか批判的な立場からすると、同じようなことが言えるような気がします。
つまり、そういう個々別々の変化については、個々別々の法律の改正で十分対応可能であって、教育基本法、非常に普遍的な理念が書かれている現在の教育基本法に特に問題はないのではないかという気がしますが、時代の変化とそれから基本法ということについてはどのようにお考えでしょうか。
○河村副大臣 確かに、時代の変化といいますか、あの終戦直後の状況と今の状況を考えたら、大きく変化していることは国民の皆さんも承知しておられるわけですね。あのときの日本を、新しい国づくりをしようという形でこの基本法が設けられたんですけれども、さっきの議論でもありましたように、現実問題として、教育基本法の中の崇高な精神は精神として十分尊重すべきものと思いますけれども、ではあのときに、例えば男女共学をしなきゃいかぬとか、またあの当時生涯教育の考え方というのはすっぽりなかったとか、具体的にそういうことが現実にあるわけですね。
今回の教育基本法の見直しは、もちろん二十一世紀を担うこれからの子供たちのためにではありますけれども、我々大人社会も一緒になってこれを考えていこうということが私は大きな視点にあると思うんですね。その中に、一つは家庭教育の問題もあろうと私は思います。家庭教育というのは、教育基本法では社会教育の一環の中でもちろんありますけれども、やはりそれをもっと前面に出す必要があるんではないかという議論もあるわけでございます。
そういう面からいって、私は、時代が大きな変化の中にあって、そして今の教育基本法の崇高な精神はそれとしても、具体的に教育でやっていく上に、もちろんこれまでも教育改革についてはいろいろな形で取り組んできたけれども、それをもう一度根本から見直していく。もちろん、それに見習う諸法律についても、新しくつけ加えるべき理念があれば、それをさらに教育現場に敷衍をしていくということの法改正的なものも必要になってくるであろう、こう考えておりますので、当然、今の時代に合ったものに考えていくという形で諮問をされて、それに答申が出てきたということでございますので、これを尊重してまいりたい、このように思っておるわけです。
○斉藤(鉄)委員 ちょっとまた別な観点から質問をさせていただきますが、国を愛する心、郷土愛、それから伝統を尊重する心、これらは非常に重要な徳目だと私は思いますし、大切なものだと考えております。しかしながら、既に小中学校の学習指導要領の中にある意味では規定されておりますし、現在の基本法、現在の法体系からも導き出されるもの、このように思います。ですから、わざわざ基本法という非常に重たい法律の中に、ある意味では心の自由、人間の心の内面の自由にかかわる事柄をわざわざ規定しなくてもいいのではないかという気がするんですが、これは愛国心とは非常に重要だということはわかった上でこのように思いますけれども、この点についてはいかがでしょうか。
○河村副大臣 卑近な例であれでございますが、確かに学習指導要領等では道徳教育のことも含めてそういうことが書いてあることは承知しておりますが、では、具体的にどうしていくかというときに、私は、今斉藤委員がこれが大切なことだということはわかるとおっしゃるならば、大切な、これはこれから教育を考えていく上で非常に大事なことだろうということをやはり基本理念にうたった上で教育の現場でそのことをとらえること、これは指導要領であることではないかということと、国の基本理念の中にそういうことは大事だということを踏まえてやることとはおのずから違ってくるのではないか。
もちろん、そんなものが、昔の国家中心主義的な、至上主義的な、ああいうものになるんではないんだという指摘もあるように、そういうことは十分配慮しなきゃならぬけれども、こういうことは大事なことなんだよということが理念の中にあるということは、そういうことは大事だとおっしゃるならば、やはりそこからスタートすべきではないか、私はそう思います。
○斉藤(鉄)委員 答申の十一ページにも、最後に「国家至上主義的考え方や全体主義的なものになってはならないことは言うまでもない。」こう一文ついているんですが、一文ついているということは、わざわざここにつけたということは、何かそういう心配があるということなんですよね。
私も、党の文部科学部会長をしておりますので、いろいろなところに行ってお話を聞いたりするんですが、明らかに今回の教育基本法の改正を、ここまで言うと言い過ぎかもしれませんけれども、今の日本人には核がなくなった、その日本人としての核、これは戦前の教育に戻すんだ、そのための教育基本法だとはっきり言う人たちもいらっしゃるわけでして、ごくごく一部の考え方とは承知しておりますけれども、そういう人たちに利用されるのではないかという素直な心配もございます。また、そうすることによって、また教育の現場を不毛なイデオロギーの対立に戻したくないという率直な気持ちもございます。
この点については、いかがでしょうか。
○河村副大臣 私も、中教審にも参加といいますか、意見を拝聴しておったのでありますが、委員の中には、そうしたことに対して、今このときにもうそんなことを言うのはやめようじゃないか、もうそれは乗り越えたんだという意見と、今斉藤委員がおっしゃったような意見があって、やはりこれはそういうことを十分配慮しなきゃいかぬという観点からここに書いてあるわけです。
それは、教育現場が、そのことを踏まえてきちっとした対応を、自信を持って取り組んでいただかなきゃならぬことでありまして、そのことについてはさらに、これはどういう形で法改正の中でうたっていくかというようなこともありますが、そういうことを、我々は戦争の反省に立った上で新しい国家づくりをやる、それで、戦後ここまで来てもう一度日本を見直すんだという起点に立てば、私は、今日まで日本がつくり上げてきた平和国家というものに対して自信と誇りを持ちながら教育現場でやっていけば、そういう問題は十分クリアできる、そのように感じております。
○斉藤(鉄)委員 この点については、いろいろまた議論を深めていきたいと思います。
最後の質問です。
現教育基本法の前文に、「われらは、さきに、日本国憲法を確定し、民主的で文化的な国家を建設して、」云々、このようにあるように、今の教育基本法はまさに憲法と軌を一にしてつくられた準憲法とも言うべき大変重たい法律だという認識でございます。
憲法については、今我々、衆議院、参議院に憲法調査会を設けまして、私も憲法調査会の委員ですけれども、かなり徹底した議論を行っております。憲法については、我々国民の代表たる国会議員がみずから議論をしていこうということで、五年をめどにということで、今約三年が過ぎましたけれども、議論をしております。
そういう意味で、準憲法とも言うべきこの教育基本法について、学識経験者の審議会の答申を受けて法改正をするという一般の法律の改正の手続でいいのかなと。もう少し、今憲法調査会で憲法について国会議員がけんけんごうごう議論していると同じように、この教育基本法についても、我々国会議員みずからがこの改正等についてけんけんごうごうの議論をするということが必要なのではないかという、改正手続の問題も話題に上がっているわけですが、この点についてはいかがでございましょうか。
○河村副大臣 委員御指摘のとおり、教育基本法が教育にかかわる基本的な根本法であって、憲法にのっとってとこうある、その趣旨というものは、我々も理解をしておるところでございます。
ただ、教育基本法は、さはさりながら教育の全体に及ぶ問題でございますから、やはり文部科学省に責任がある法律だ、こう考えておるわけでございます。この委員会あるいは国会の場もこれからあるわけでございまして、そこでやはり十分議論をしてもらわなきゃいけない問題で、当然気持ちの上では、もちろん法律はいろいろありますけれども、いわゆる閣法で出す今までの法律とはやはり重きは、非常に重いものだという意識は十分持っておるわけでございます。
もちろん、これからの国会のあり方いかんにもよるわけでございますが、ここまでの手続はそういう形で今進めてきておるということでございまして、国民の皆さんの広い意見をさらに聞く必要もあろう、こうも考えておりますので、そうした広範な議論の中で改正の方向を目指してまいりたいと考えております。もちろん、委員御指摘のとおり、この改正については当然慎重な議論が必要である、このように考えております。
○斉藤(鉄)委員 国民の関心もまだまだ高くなっていないような気がいたします。国民も巻き込んだ広範な議論が必要だなということを申し上げまして、質問を終わります。ありがとうございました。