【衆議院文部科学委員会 平成14年6月7日】
○斉藤(鉄)委員 公明党の斉藤鉄夫でございます。
今回の著作権法の一部改正案は、現在のデジタル化、ネットワーク化の進展という時代の状況、それから知財戦略をつくっていかなくてはならないという状況、その中で、大変時宜を得た必要なもの、このように評価をしております。その上で、二、三、具体的なことについて質問をさせていただきます。
今回の法改正には、実演家人格権の創設など、実演家の権利の拡充が盛り込まれております。実演家の権利については従来からさまざまな議論があるようですけれども、例示されるものには歌手、俳優などが多く、そうしたものが実演家のイメージになっているようでございます。しかしながら、我が国の文化を支える実演家には、例えば、先日亡くなられた小さん師匠のような落語家、講談師、浪曲師、曲芸師、漫才師、手品師など、さまざまな方々がおられます。
文部科学省では、実演家の権利について考えるときには、このように、歌手、俳優というだけでなく、日本の伝統文化等を支えているこうした方々のことも当然視野に入れるべきであると考えておりますが、まず、現在の日本の著作権法において、落語家や漫才師など、いわゆる演芸を行う人々はどのような権利を与えられているのか、このことについてお伺いいたします。
○銭谷政府参考人 現在の我が国の著作権法におきましては、著作権と著作隣接権という二種類の権利が規定をされております。
これらのうち、著作権は、音楽とか映画、アニメ、コンピュータープログラムなどの著作物を創作した人が持つ権利でございまして、一方、著作隣接権は、著作物を伝達する人、すなわち、お話にございました歌手や俳優などの実演家、音楽CDなどを製作するレコード製作者、番組を放送する放送事業者などが持つ権利でございます。
この著作隣接権を持つ実演家につきましては、著作物を演じる人が広く含まれておりまして、歌手や俳優のほか、お尋ねのございました落語家や漫才師などの演芸を行う人々も実演家として著作隣接権を持つということになります。
また、例えば古典落語を演ずる落語家は、俳優の方と同じように著作隣接権のみを持つわけでございますけれども、御自分でネタを考えて行う、例えば新作落語の落語家の方とかというのは、シンガーソングライターと同じように著作権も持つ、したがって、こういう方は著作権と著作隣接権の両方を持つということになります。
実演家といいますと、御指摘がありましたように、歌手や俳優をイメージすることが多いわけでございますけれども、ただいま申し上げましたように、落語家や漫才師などの演芸を行う人々も実演家として著作隣接権を持ち、また、みずからネタも考える方々は著作者として著作権も持っているということになります。
○斉藤(鉄)委員 いわゆる演芸と言われる人々についても著作隣接権、もしくは著作隣接権と著作権両方、これが存在するという御答弁だったと思います。
今回の改正においては、実演家人格権が新設されますけれども、これについても、俳優の演技の改ざんとか歌手の声の改ざんなどといったことが例示されることが多いわけですけれども、演技をおもしろおかしく改ざんするといった行為については、芸人ならいいだろうという発想があるのか、演芸の世界の人々が犠牲になることが少なくないようでありますし、いろいろその苦情も聞くところでございます。
そこでお伺いしたいわけですが、今回新設を予定している実演家人格権の対象には、歌手や俳優だけではなく、芸人と言われる方々の演技も含まれるんでしょうか。
○銭谷政府参考人 先ほど申し上げましたように、著作権法上の実演家には、落語家や漫才師など、芸人と言われる方々が広く含まれているわけでございます。
したがって、現在、御審議をいただいております著作権法の一部を改正する法律案が成立をいたしますれば、実演家人格権が創設されるということになるわけでございますが、芸人と言われる方々も、実演家人格権として、名誉、声望を害する改変をされない権利、いわゆる同一性保持権と、名前の表示を求める権利、氏名表示権を持つということになります。
具体的には、同一性保持権を持つことによりまして、芸人の方の演技を改ざんする行為を禁止することができるようになり、また、氏名表示権を持つことによりまして、落語や漫才などのCD、DVD、こういったものを販売する際には、御自分の氏名や芸名の表示を求めることができるということになります。
○斉藤(鉄)委員 実際のビジネスの世界においては、芸人と呼ばれる方々は非常に弱い立場に置かれていることが多くて、例えば著作権だとか演芸家の権利だとか、そういうことを言うと、もう、次、あんた来なくていいよということを言われることが多いということも聞いております。非常に弱い立場の方々が多い、歌手や俳優の方々に比べて冷遇されることが多いとも聞いております。
これを乗り越えるためには、芸人の方々自身も、例えば音楽の世界におけるJASRACのような団体を築いていくことが必要、こういう認識を持っておられるようでございますけれども、芸人の方々が、音楽におけるJASRACのように、著作権等管理事業、これを行う団体を結成するというふうなことは可能なんでしょうか。
○池坊大臣政務官 斉藤委員は、今までにも、落語家、漫才師などの演芸を行う方々の権利について心を砕いていらっしゃいましたけれども、今御質問の、芸人の方々が団体を結成して自分たちの権利を集中して管理運営する著作権等管理事業を行うことについては、何ら問題はございません。
一般に、芸人と言われる方々は、一部の有名な方々を除いて、放送局との交渉などでは交渉力がどうしても弱いという弱者の立場にいられる方が多いと思います。そういう方々が、団体の結成や管理事業による権利の集中管理を行うことによって、交渉力を高めるということは大変有効なのではないかと思っております。
今、斉藤委員がおっしゃいましたように、JASRACと呼ばれております社団法人日本音楽著作権協会は、かつて弱者の立場にあった作詞家、作曲家が一人一人では交渉するのが弱いということで築き上げてきた管理事業者であり、芸人の方々についても、管理事業の実施等について、もし御相談がございましたら、必要な助言等を行っていきたいというふうに思っております。
○斉藤(鉄)委員 昨年秋に、この委員会で、文化芸術振興基本法という法律をつくらせていただきました。この文化芸術振興基本法の中に、日本の伝統芸能、伝統演芸についても積極的に我々はこれを守って発展させていこうということを議論し合ったわけでございますけれども、その具体策として、こういういわゆる演芸を行っている方々の創意工夫、また実演家の人格権、こういうものを守ることが必要だな。実際の現場の声を聞いてみますと、これがなかなか現実には守られていないということでございますので、どうかこれらの方々の権利が守られるように文部科学省としても御配慮をいただきたいと思います。
次に、もう一つ、最近話題となっておりますCDのコピーの問題についてお伺いさせていただきます。
情報化の進展については、デジタル化ということとネットワーク化ということが重要な課題であると言われております。これらのうち、インターネットの普及などのネットワーク化への対応については、日本は国際的に見ても非常に進んでおり、今回の改正案にある放送事業者等への送信可能化権の付与も世界初の法整備と聞いております。こうしたネットワーク化への対応とともにデジタル化への対応も重要であり、今回の改正案にある実演家人格権の創設はむしろデジタル化対応である、このように思います。
デジタル化によって完璧なコピー、一〇〇%コピーがつくれるようになった。アナログの時代はだんだんコピーを重ねていくうちに劣化していくわけでございますが、デジタルの場合はそれがないということで、一〇〇%完全なコピーがつくれるようになったということも従来から指摘されている問題でございます。
特に、最近、音楽CDのいわゆる私的複製という問題が頻繁に議論されておりまして、このこととCDの売り上げの減少、それから中古品流通の問題が指摘されております。CDを買ってくる、デジタル化で一〇〇%完璧なコピーをつくる、買ってきたCDについてはこれを中古市場に売る、こういうこと。また、その私的にコピーしたものが、これは何度複製しても、コピーしても劣化しないわけですから、CDを一枚買ってきて、これが広く私的コピーが繰り返されて使われる、こういう問題でございます。
この個人使用目的のデジタルコピー、法律でも個人使用目的というのは許されているわけですが、このデジタルコピーの問題への対応については国際的に見てどのような対策が想定されているのか、まずこの点をお聞きしたいと思います。
○銭谷政府参考人 先生お話がございましたように、我が国を含めまして多くの国の著作権法におきましては、例えばテレビの番組を録画いたしまして後日見る場合のように、いわゆる私的使用のための複製というのは例外的に権利者に無断で行えるということとされているわけでございます。
ただ、最近、お話のございましたように、デジタル方式の録音機器の普及によりまして、オリジナルと全く同じ品質のコピーができるようになってきております。お話にございましたように、例えばCDを買ってまいりまして、それを、今百円か二百円だと思いますけれども、ブランクのCD―Rに録音いたしますと、オリジナルのCDと全く同じ品質でコピーができるわけでございまして、それを自分が持っていて、オリジナルなものは中古店などに売るというようなことも見受けられるというような指摘もございます。
こういった、かつての品質が劣化するコピーとは違いまして、全く同じ品質のコピーができるようなこの時代に、私的使用のための複製が権利者に無断で行えるということでいいのかどうかという議論があることは私どもも承知をいたしております。
こうした状況に対応するためには、したがって、私的使用のための複製を禁止するという方策も理論的にはあり得るかとは存じますけれども、そのような法制を採用しても、個人的に行われるコピー行為の把握が困難であって、権利の実効性を確保できないという面はございます。
そのため、関係条約におきましては、いわゆるコピープロテクションを権利者自身が用いるということを想定いたしまして、そのコピープロテクションを回避する、解除する行為を防止するための法制度を設けることを締約国に義務づけているわけでございます。これに従いまして、我が国におきましても、著作権法の改正を行いまして、コピープロテクション解除装置の販売等を禁止する、それからコピープロテクションを解除した上での私的使用のための複製、こういうことを禁止するといったことを行っているわけでございます。
また、これは条約上の義務ではございませんけれども、我が国を含む幾つかの国では、デジタル方式での私的使用のための複製によって生じる損害を補てんするための補償金制度というものを採用して、損害を受ける側に対してこれを補償するという制度も採用しているという実態はございます。
○斉藤(鉄)委員 このこととの関係で、中古品流通の問題が指摘されております。
先日最高裁判所で判決のありましたゲームソフトの中古品問題、これは私的コピーは無関係である、こういうことでございましたけれども、この中古品問題と音楽CDの中古品問題。音楽CDの中古品問題の本質は、私的コピーがつくられることによってオリジナルが転売されるということに本質があると思いますが、このゲームソフトの場合とはちょっと音楽の場合は違うと私は思いますけれども、そこで、今後文部科学省また文化庁として、中古品の問題と著作権との関係、これをどう考え、どうしようとしているのか。
レコード協会からは、中古品の販売そのものを禁止するような法的措置もとってほしいというふうな声も出ているところでございますけれども、もしくは、どうしてもそれが不可能であれば、例えば新品を売るときから中古品対策費も上乗せして売るようにしてほしいとか、そういう意見も悲鳴のような形でレコード協会から出ておりますが、この中古品の問題と著作権との関係についてどうお考えになっているか、お伺いします。
○青山副大臣 著作権に関係してまいります中古品販売、実はこれには二つの種類がありまして、今御指摘の点のように、一つは、私的使用のためのコピーが合法的に行われた、合法的に行われたことによって今度は不要になったオリジナルを中古品として転売をするというケースがあります。これは、音楽CDがそういうものであります。もう一つは、今お話しになりました書籍やゲームソフト、こうしたものは、コピーをしないでそのまま買われたものが他に転売をされる中古品という、二種類あるわけです。
前者の音楽CDの場合につきましては、国際的には、コピープロテクション、これを活用することによって私的コピーそのものを防止する方法、それから、今補償金のお話が出ましたが、補償金制度によって権利者の損失を補てんすることという対応策が今とられております。
ただ、これらの対応策の本当のあり方について、現在文化審議会の著作権分科会でも実は検討をいたしております。そして、検討していく予定でおりますが、もう一つの、後者の書籍やゲームソフトの場合ですと、これは一般の、例えば自動車中古車と同じようなもので、すべての中古商品に当てはまるものでございまして、この種問題商品については、国際条約においても、諸外国の著作権法においても、中古品販売には著作権は及ばないという考え方が今とられているようでございます。
○斉藤(鉄)委員 今の法制度によるとそういう御見解ということでございますが、現実には、私的コピーが本当に普及をして、レコード業界の売り上げが激減しているということは、やはり日本の音楽文化の振興にとってもこれはゆゆしき問題だと思います。文化芸術振興基本法をつくったときにも、音楽というのは、やはりその一つの大きな柱でございますので、この文化を守り育てていくような方策を考えていただきたいということを要望して、質問を終わります。