【衆議院憲法調査会 政治機構小委員会 平成14年3月14日】

○斉藤(鉄)小委員 公明党の斉藤鉄夫です。
 私、先生にまず最初に聞こうと思っていたこと、今、島委員の最後の質問と重なってしまったんですけれども、もう一度、三権分立と、憲法四十一条の「国会は、国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関である。」という、この条文との関係についてお伺いしたいと思います。
 私、今の教育でどういうふうにこの三権分立が教えられているかちょっと勉強していないんですが、少なくとも、国権の最高機関である国会が法律をつくり、つまり政治の大方針を決め、行政はそれを執行する機関にすぎないんだというふうに私自身教わりました。国会が決めたことを忠実に実行するために国会議員が大臣になるんだ、こういうふうに私は教わりました。
 きょうの先生のお話は、そうではなくて、フュージョン・オブ・パワーという言葉を使われて、ある意味では国権の最高機関は内閣であるというふうにも聞こえたんですけれども、この三権分立の考え方について、もう一度先生にお伺いいたします。

○山口参考人 ちょっと時間がなくて十分御説明ができなかったようでありまして、私は、あくまで国会が国権の最高機関という前提で議院内閣制の運用を考えるべきだというふうに考えております。
 イギリスでも議会主権という概念があるわけでありまして、まず、権力の源泉は国会である。主権者である国民が直接選べるのは国会議員でありまして、その国会議員が集まる議会こそが三つの権力の中ではやはり一番強い正当性を持っているというのが国権の最高機関という文言の意味だと私は理解をしております。
 ただし、実際には、国会は多数決で動くわけですから、国会の多数勢力が行政権を掌握するということになるわけで、内閣が強い権力を持つということは、あくまで国会の多数派だから権力が持てるわけですよ。ですから、決して、内閣の力を強めていくということは、国権の最高機関という理念とは矛盾しないというふうに私は理解をしております。
 それから、権力分立の概念というお話ですけれども、司法の独立というのはもちろん大変重要な理念で、その部分については分立という言葉のイメージが明確になるわけでありますが、立法と行政というのは、これはむしろ緊密に連携をする、協力をするということが必要になるわけでありまして、ですから、モンテスキューがモデル化した図式を議院内閣制に当てはめるということについては、私は無理がある。
 むしろ実際には、政治任用をふやすという議論をするときに、官僚の方がそれを嫌がって、権力分立を持ち出すわけですね。つまり、国会議員が余りたくさん行政の中に入ってくると、それは権力の分立に反するんだということを言って反対をしてきたわけですけれども、そもそも、国会議員が総理大臣、閣僚等になって行政府の指導的ポストにつくということですから、そういう意味での、国会議員が行政の中に入ってくるということを権力分立という枠組みで眺めますと、これはやはりどうしても矛盾ということに見えてしまうわけです。
 ですから、私は、憲法学における権力分立の概念というものは、議院内閣制の現実に合わせて考え直す必要があるというふうに思います。

○斉藤(鉄)小委員 国会と内閣の関係性についてもう一問聞かせていただきますが、両院制、二院の役割分担をという先生のお話でしたけれども、これをもう少しお話しいただきたいと思います。
 衆議院と内閣については、不信任決議権と解散権、そういうそれぞれ相対している緊張関係があるわけですけれども、内閣と参議院につきましては、参議院に実質的な決議権、法定上のものはないわけですけれども、しかし実質的にはある。しかし内閣は、参議院に対して解散権もなければ、ないどころか、議員の身分は六年間という長期安定保障。これでは、ある意味で内閣と国会の緊張関係、ちょっとバランスを欠くんではないかと私自身は思っていますけれども、その点も含めてお話をいただきたいと思います。

○山口参考人 参議院が政党化をしたとか、良識の府としての機能を失ったというような批判がマスメディアにはよくあるわけですけれども、今の憲法のもとで、おっしゃるように、参議院が衆議院と実質的には対等の立法権を持っているとすれば、これはやはり政権の運営とか国政の遂行上、参議院が政党化するというか、与党が参議院の多数をきちっと押さえて法案を通せるようにするというのは必然ですね。これは、非難する方がおかしいと私は思います。
 御指摘のように、現状では、参議院選挙の結果で政権がかわったりとか、参議院で問責決議みたいなものが出てきたりということで、内閣に対する参議院のある種の抵抗といいましょうか牽制機能というのは大変強いわけですね。私は、二つの院の役割分担というものを今後の憲法の議論の中で明らかにしていく。衆議院は、あくまで政権を支え、法律をつくる、予算をつくる院だと。参議院は、むしろ、政権を支える与党の論理じゃなくて、大
所高所から国政上の問題を研究したり、あるいは行政を監視したりという、いわば批判的な、あるいは政策に関するシンクタンク的な機能を強化していく。その分、立法ですとかあるいは人事、総理大臣の指名その他については、権限はやはり減らすべきだというふうに思いますね。
 あわせて、例えば最高裁判所の裁判官の指名について、国民審査なんというのはもう形骸化しているので、あんなものはやめて、例えば参議院がそれについてヒアリングをして、同意するかどうかという権限を持つとか、あるいは条約の承認は参議院が先にやるとか、そういう面で参議院の役割を新たに見出していくということが必要ではないかと思います。

○斉藤(鉄)小委員 最後に、首相公選制についてお伺いします。
 昨年の夏、憲法調査会でイスラエルに行ってまいりました。首相公選制を実行し、今は廃止いたしましたけれども、いろいろな方から意見を聞いてまいりました。たくさんの方が、先生おっしゃっているように、政党政治の死を意味するというふうにおっしゃっておりました。しかし、私自身は、ちょっと詳しいことを言う時間がないので省略しますが、制度設計に不備があったがための一つの結果なのではないかとも思っています。そこは検証していかなくてはいけないと思っておりますけれども。
 私がお聞きしたいのは、現在のイスラエルのあの非常に悲しむべき現状。首相公選制は廃止されましたけれども、シャロンさんは首相公選制で選ばれた方です。選ばれた方であるがゆえに、選挙のときに掲げた方針、この方針を変えられない、非常に強硬な姿勢をとらざるを得ないという、ある意味でリーダーシップを持ったがゆえの負の側面が出ているのかなとも思うんですけれども、この点に関して何か御感想があれば、先生の御意見を
お聞きしたいと思います。

○高市小委員長 もう質疑時間の終了になっておりますが、簡潔にお願いいたします。 山口参考人。

○山口参考人 確かに首相公選制で、一回決めたことが転換できないということはありますが、それはリーダー
シップの問題だと思います。
 もう一つ、首相公選制にしますと小党分立がやはり進むという傾向があるわけです。つまり、総理を選ぶんだっ
たら、議会の方は適当に自分の好きなところに入れようと。そういう意味で、首相公選制をやりますと、私は、議
会が非常に小党分立になっていく危険性が大きいと思います。

○高市小委員長
 斉藤鉄夫君の質疑は終了いたしました。