【衆議院経済産業委員会 平成14年11月13日】
○斉藤(鉄)委員 公明党の斉藤鉄夫です。
今回の知的財産基本法の基本的施策の中に三つ柱がございまして、知的財産の創造、保護、活用ということでございますけれども、私は、この知的財産の創造という柱についてまず質問をさせていただきたいと思います。
知的財産を保護し活用するためには、まずそのそもそものもとである知的財産そのものがなくてはならないわけです。この知的財産を生み出すところ、これはいろいろございますけれども、やはり知の殿堂、大学の役割は非常に大きい、このように思います。
その大学ですが、よく日米比較がされますけれども、例えば大学発の特許だけを見ましても、日米で百倍の差がある、これは絶対量にしましても、一大学当たりにしましても、一研究者当たりにしましても、大きな差があると言われております。その理由には多分二つあるんだと思います。一つは、そういう研究開発活動そのものが、アメリカに比べておくれているのではないか、活発化していないのではないかという面と、それから、そういう研究活動の結果を財産化していく、知的財産化していく、その制度が整っていないのではないか、援助するシステムが整っていないのではないか、そういう二面があるかと思いますが、まず、知財そのものを生み出していく研究活動を活発化していくことが私は必要だと思います。
今の日本社会、改革が進んでいると言われておりますが、その改革が最もおくれているのが大学だという声も聞こえます。この大学の研究活動そのものをアメリカに負けないように活発化していくということが非常に重要になってくると思いますけれども、その大学改革ということについて、文部科学省から決意を聞きたいと思います。
○工藤政府参考人 まさに先生のおっしゃるとおりでございまして、大学は、知の創造と継承の大きな役割を担っているわけでございまして、今おっしゃいましたような観点は大変重要なことと存ずるところでございます。
このため、ここ十年ほどいろいろな大学改革を進めてまいりまして、かつ、諸制度の改善も行ってまいりました。例えば、大学教員について、任期制や公募制の活用等による流動化の促進でございますとか、競争的資金で、間接経費の導入を含めまして、より使い勝手のいい研究費の仕組みでございますとか、それから若手研究者の自立支援のためのリサーチアシスタントやポスドク等の支援でございますとか、さらには兼職・兼業の弾力化を含めまして多様な産学連携の推進、さらには、研究論文だけに偏ることがなくて、特許等の知的財産の創出について研究者の適切な評価に含めるような体制の整備などを進めてきたわけでございますが、まだまだ進めなければいけないことがございます。
このため、私ども、国立大学につきましては法人化を予定しているわけでございますが、それを契機に、各大学の自立性をより一層拡大いたしまして、より戦略的かつ活発な教育研究活動が展開される仕組みを予定してございます。
今後とも、そういう面で各大学のそれぞれの個性を生かしながら、教育面でも研究面でも、活力に富み、国際競争力のある大学づくりを私どもも支援してまいりたいと思っております。
○斉藤(鉄)委員 国立大学等の改革は随分進んで、研究の現場は活性化されてきているという声を聞きます。残されたのは大学。大学は、しかし、あくまでも学問の場ですから、国が強制的にああしろ、こうしろということは言えませんけれども、しかしながら、若手研究者が本当にその能力を伸ばしてすばらしい研究ができるような、そういう活性化をお願いしたいと思います。そのための大学改革、来年から始まるということでございますので、期待をしております。
それから次に、生み出した知的財産をどう活用していくかというところでございますが、その柱ですけれども、来年度の概算要求に大学知的財産本部整備事業、各大学に知的財産本部を置くその整備事業が盛られております。知財に対してこれまでほとんど関心を払ってこなかったと言われている大学、その大学に知財の意識を埋め込むというために大変画期的な事業であると評価をしておりますけれども、具体的にどのような事業をやるのか。現存のTLO、テクノロジー・リエゾン・オフィス等との関係がどうなるのかということがいま一つ見えませんけれども、この大学の知的財産本部整備事業、これについてどういう計画なのか、教えていただきたいと思います。
○石川政府参考人 大学における知的財産本部整備事業についてのお尋ねでございますけれども、この事業は、大学における知的財産の原則個人帰属から機関帰属への転換というような方向転換を踏まえまして、大学が組織として知的財産の有効かつ効率的な管理、活用を図る、これを促進するための機能を持つことを支援する事業でございまして、例えば、大学ごとに最も効率的、効果的に知的財産を保護、活用するための機能を整えていただくようなものでございます。
もう少し具体的に申し上げますと、例えば、担当副学長のもとに全学的なマネジメント体制をまず整備していただきまして、その上で、知的財産に関する専門的な知識を有する、例えば企業の知財部の経験者等、このような方々を外部から登用いたしまして、そして学内の方々とともに知的財産に関する基本的な方針や管理、活用のルールづくりなどを行っていただきまして、これにより迅速かつ効率的な知的財産の管理、活用を図るようにするというような形の事業でございます。
ただいま先生からTLOの関係についてもお尋ねがございました。
TLOにつきましては、現状におきましても、TLOを持つ大学、あるいはTLOを持たない大学、それからTLOが学内の組織になっている大学、さまざまな形態がございますので、一律にその関係を決めるというようなことではなくて、要は、知的財産の効率的、効果的な管理、活用という観点から、各大学におきまして、知的財産本部、この事業とTLOあるいは共同研究センター等の組織の連携関係などについて、それぞれの状況に応じて御検討、御工夫をいただくことが重要だろう、こんなふうに考えているところでございます。
○斉藤(鉄)委員 これから大学評価という時代に入ってきますけれども、各大学が自分のところの研究者が生み出した知的財産をどう活用しているか、大学がどこまで努力しているかということもぜひ大学評価の重要な項目になるように御努力をいただきたいと思います。
先ほどの石川局長の御答弁の中に、この整備事業については、これまでは研究者個人に帰属していた知的財産権を、これから基本的には大学に帰属する、機関帰属にしていく、そういう方向性を出すんだという答弁でした。
私は、基本的には、生み出された知的財産をシステマチックに、有効に活用していくにはそういう方向性が望ましい、このように思っておりますが、逆に、個人帰属があるから一生懸命、研究者というのはそんなものじゃないかもしれませんが、個人帰属があるから一生懸命、知的財産という観点からも頑張ってきたという研究者もいようかと思います。どっちみち大学の帰属になるのだったら、特許化ということは考えないで研究しようとか、また研究そのもののインセンティブも薄れてくるというふうな指摘もありますけれども、機関帰属、大学に帰属するんだということについての、さっき言ったような懸念についてはどのようにお答えになりますでしょうか。
○石川政府参考人 特許の帰属等についてのお尋ねでございますけれども、大学における知的財産の帰属につきましては、昨年三月の第二期の科学技術基本計画、あるいはことし七月の知的財産戦略大綱におきましても、知的財産の有効活用のための機関帰属が適切というふうなことが言われております。また、このほど、私どもの文部科学省の方の知的財産ワーキング・グループにおきましても同様の方向が確認されたところでございます。
知的財産を原則機関帰属といたしますということにつきまして、そして組織的に取り扱うということにいたします点につきましては、いろいろな意味合いといいますか意義があるわけでございまして、例えば、大学のさまざまな知的財産の一元的な管理、活用といったようなものが図られるとか、あるいは企業等との交渉の一元化、円滑化、こういったものが図られるとか、こういった事柄によりまして、これまで個人帰属のもとでややもすれば死蔵されてきたような知的財産が有効に活用される、そして大学の研究成果の産業界への移転が一層促進されるというふうに私ども考えてございます。
また、先ほど先生が御懸念の、研究者個人の、どちらかといいましょうか、インセンティブのような、こういった面につきましても、その成果あるいはその利益の還元というようなことは、それぞれこういった仕組みの中でも維持できるものと考えておりますし、機関帰属にするようなことに伴いまして、大学が組織として扱うということになりますと、それに伴いまして研究者個人のさまざまな負担も軽減されるというふうに考えておりまして、こういった方向がむしろ研究者個人の研究活動にも大いにプラスになるのではないか、こんなふうに考えているところでございます。
○斉藤(鉄)委員 例の日亜化学の中村さんの例、これは企業ですから大学の今の場合と直接比較できませんけれども、ああいう例もございました。
機関帰属、しかし、それによってもし利益が得られたとしたら、その利益の配分等についてはまた別途考えるという御答弁でしたのでよくわかりましたけれども、研究者個人のインセンティブを殺さない形での運用をぜひお願いしたいと思います。
それから、次に、知財に関する教育や人材育成について、文科省と法務省にちょっとお聞きしたいと思います。
米国では、弁理士さんそれから知財に非常に強い弁護士さん等、特に訴訟が多い国柄ということもあって大変知財に強いローヤーがたくさんいる。それに対して日本は、知財に関する法曹、弁理士さんにしても弁護士さんにしても非常に少ない、こういうことが言われているわけでございますけれども、非常にこれから重要になってくると思います。国際競争という面でも重要になってくると思います。
今回、きのう衆議院を法科大学院の法律が通りましたけれども、この法科大学院での知財教育をどのように考えているのか。また、この法科大学院の設置認可それから大学評価、設置認可は文科省がやり、大学評価は第三者がやるわけですから、この大学評価について文科省に答えてくださいというのもちょっと無理な質問かもしれませんけれども、こういう設置認可や大学評価の際の基準に、知財に関する教育ということも非常に重要なものとして置くべきではないか、このように考えますけれども、いかがでしょうか。
また、法務省の方には、新しい司法試験、新司法試験の選択科目にこの知財を入れるべきだ、このようにも考えるわけですけれども、いかがでしょうか。
それから、文科省にもう一つ。法科大学院という専門職大学院ができたわけですけれども、将来的にはこの知財に特化した知財専門職大学院等については構想があるのかどうか、そういうことについてもお伺いします。
○工藤政府参考人 御審議賜りまして、昨日本会議で可決いただきました学校教育法改正を初めとするロースクール関係の法案がございます。
私どもは、今回の制度改正によりまして、高度の専門職業人を大学院レベルで養成できるように、専門職大学院という制度化を予定しているわけでございますが、これは、いろいろな分野の活用が考えられるところでございます。今、最後の方に御指摘ございましたように、知財に特化した専門職大学院というのも当然可能な制度設計になってございますし、各大学の意欲的な取り組みを期待するところでございます。
その中でも、法科大学院につきましては、昨年末のアンケート結果によりますと、法科大学院を開設予定して検討している大学の中で、そのほとんどの大学で知財に関する科目を開設する予定と承知してございます。法科大学院そのものは、司法行政のために基本的な科目の教育が必要でございますけれども、あわせてそれぞれの大学院が特色のある人材養成ができる仕組みになってございまして、そういう意味で、知財に強い法曹の養成というのが大いに期待されるところでございます。
私どもも、各大学の自主的な判断によるところでございますけれども、それぞれの大学の積極的な取り組みを期待しながら、その支援に努めてまいりたいと思っております。
そういう中で、設置認可や大学評価の際に、そういうのをチェックし、鼓舞してはどうかという御指摘でございます。
大学の設置認可は、およそ大学として必要最小限の基準に合致しているかどうかというのを見る審査の仕組みでございますけれども、そのために、知財というのを押しなべてすべての大学にチェック項目として定めるのがいいかどうかというのは若干問題もあるのかなと思ってございますが、第三者評価によります大学評価につきましては、それぞれの第三者評価機関が自主的に評価項目をお決めになって、それぞれの大学を教育研究の向上のためにバックアップしていくという仕組みでございます。
そのため、努めて大学や大学評価機関御自身の見識と御努力あるいは御判断によるところでございますけれども、世のこういう知財に対する重要性の高まりを受けまして、それぞれの関係者が適切に判断されることを、私どもも機会を見つけて促してまいりたいと思っております。
○寺田政府参考人 司法試験についてお答え申し上げます。
新しい司法試験は、今文部科学省の方からも御説明がありましたとおり、法科大学院の教育、それから司法試験、司法研修所の修習というものを一体として法曹養成するという構想ででき上がっているものでございます。
したがいまして、司法試験の科目は、論文式の試験の中には選択科目というのを設けることになっておりますが、この科目は、実際に社会にどういうニーズがあるかということのほかに、法科大学院で現にどういう科目が教えられているかということを考慮して新しい試験委員会において定める、これは省令で定めるということになりますが、そういうことに制度上なってございます。
ただ、私どもが今まで拝見しているところでは、法科大学院を設置されるという予定のかなり多くの大学において、現在の世界情勢等を考慮されまして、この知的財産権の科目を講座として設けようというふうに予定されているようでございますので、当然のことながら、そういう動向がこの新司法試験の科目の決定において考慮されるというふうに考えております。
○斉藤(鉄)委員 ぜひ前向きにお願いしたいと思います。
それでは、最後に経済産業省にお聞きしますけれども、アメリカあたりは非常にこの知財に対しての戦略があって、こんなものが特許になるのか、例えばビジネスのやり方とかそういうものまで特許にして、アメリカンスタンダードでそれを世界に押しつけてくるということが行われているわけですが、日本もある意味で、これからの知財の国際的なルールづくり、その中心になっていくべきではないか。アメリカばかりに任せておかないで、日本も国際的なルールづくりの中心になっていくのも非常に重要な戦略かと思います。
そういう意味では、まだこの知財の法制化が進んでいない途上国への協力といいましょうか、途上国との今後の知財に関しての協力が非常に重要になってくる、日本戦略を世界戦略に広げていくという意味でも非常に重要になってくるかと思いますが、これに対しての経済産業省の戦略をお聞きします。
○平沼国務大臣 御指摘のとおり、非常に大切なことだと思っております。
特に、我が国と緊密な経済関係を有するアジア太平洋地域の途上国におきます知的財産権分野の人材育成協力につきましては、経済産業省といたしまして、従来から積極的に問題意識を持って取り組んでいるところでございます。特に平成八年度以降におきましては、WTO・TRIPs協定の着実な履行を支援する観点から、やはりレベルアップをしていかなければいけませんので、私どもとしては、延べ一千四百人以上の行政官、法律家等を受け入れまして、そして、主に知的財産法制でございますとか特許等の審査能力向上、こういったことに対する研修等を積極的に行ってきたところでございます。
また、先ほど来御指摘がございますように、近年、模倣品被害、こういったことが拡大をし、これが深刻化をいたしておりますので、途上国において実効的な模倣品の取り締まりが行われるように、各国の特許庁だけではなくて、警察でございますとか、あるいは税関、あるいは裁判所などの取り締まり関係機関の人材育成協力にも重点的に取り組んでおります。
具体的に、簡単に申し上げますと、世界知的所有権機関のジャパン・ファンドというのがございますので、これを活用しまして、平成十一年度には途上国の取り締まり職員を対象とした研修コースを開始しておりますほか、来年二月にはタイにおいて、取り締まり職員の能力向上を目的とするエンフォースメント・ワークショップを開催することといたしております。こういったことに加えて、さらに中国が非常に大きな問題になっておりますので、中国あるいはシンガポールにおいて、中国、ASEAN諸国の取り締まり職員に対するセミナーを開催する、こういったことで途上国対策はしっかりとやっていこう、このように思っております。
○斉藤(鉄)委員 終わります。ありがとうございました