【衆議院経済産業委員会 平成14年10月11日】
○斉藤(鉄)委員 公明党の斉藤鉄夫でございます。東海村のジェー・シー・オー臨界事故からちょうど満三年がたちました。あのジェー・シー・オー臨界事故、あのときも原子力に対しての国民の信頼というのは地に落ちたわけでございます。これをどう回復するかということで、この国会でも、その直後の臨時国会で、原子力災害対策特別措置法、それから原子炉規制法の改正、その規制法の改正の中で今回のホイッスルブロアの申告制度もできたわけでございます。それから、原子力安全委員会の抜本改組。このような、ある意味ではこの国会の議論を通して大改革をした、原子力安全に対して抜本改革をした、我々国会議員としてこういう自負があるわけでございますが、今回の事故はそのときの抜本改革が余り役立っていないのではないか、あの改革は一体何だったんだろうか、こういうじくじたる思いでございます。
確かに、今回対象となりました事案は、あのジェー・シー・オー事故の前の事案ではございますけれども、しかし、今回の事案に対する経済産業省、それから東電、電力会社の対応を見ておりますと、このジェー・シー・オー事故の反省が全く生かされていないということを強く感じ、本当に残念に思う次第でございます。
私ども、党として調査団を派遣いたしました。九月の十日と十一日、我が党の経済産業部会長の河上理事を団長といたしまして、私も入りまして、福島第一発電所、第二発電所、それから柏崎刈羽原子力発電所に伺いまして、地元の首長さん、それから発電所関係者、実際に超音波探傷等をやっておりました技術者等の皆さんからお話を伺ってまいりましたので、きょうはその方々の声を通して質問をしたいと思います。
まず最初に、福島の地元四町長さん、富岡、双葉、楢葉、大熊、この四町長さんとお会いをいたしまして、ゆっくりお話をお伺いしました。いろいろな御意見がありましたけれども、共通しての意見は、安全規制の強化、これしかないのではないか、我々地元の人間はここから逃げ出すわけにはいかない、安心したいんだ、その安心のためには今の規制体制ではだめだということが今回わかった、抜本的な安全規制、この強化をしてほしい、このような声でございました。
そして、具体的には、ここからは私の意訳が入りますけれども、現在のダブルチェック体制、原子力安全委員会と原子力保安院の、八条機関と行政、このダブルチェック体制ではもう根本的にだめで、アメリカのようなNRC、ニュークリア・レギュレーション・コミッティー、このような三条機関として全く独立をして、先ほどの田中委員の質問にもございましたけれども、こういう体制に変えない限り、今回、安全規制を強化する強化すると言っても国民は納得しないのではないか、こういう感を強くしたわけでございます。
ジェー・シー・オー事故の後にも同じような議論がございました。そのときは、やはりダブルチェック体制というのは日本の風土に合っているんだ、そして、日本の歴史の中で積み重ねてきたもので、これが一番いいんだということになったんですが、私もそれを納得しましたけれども、今回、この非常事態を乗り切るには、このダブルチェック体制を強化しますというだけではもう国民は納得しない、全く新しい規制体制をつくるということしか今回のこの危機は乗り越えられないのではないかということをこの地元の四町長さんはおっしゃったんじゃないかなと思います。この点についての御見解をお伺いいたします。
○平沼国務大臣 お答えをさせていただきます。
私も四町の町長さんにお目にかかり、また議長さんたちにもお目にかかって、じかに御要望等は承っております。今斉藤先生が言われたような同様の強い御指摘がございました。
今、この原子力の安全体制の確立について大変御議論をしていただき、そしてお力をいただいた、そういう中で、ダブルチェック体制が日本の風土には必要だ、こういう御認識を持たれた、こういうお話も承ったところでございまして、それでは、今、ちょっと状況としては、これだけ信頼を損なった状況の中で、全く抜本的なそういう体制をつくるべきじゃないか、こういう御指摘でございました。
再三再四、私、御答弁させていただいていますけれども、やはりこれからまだ十一基とか十三基、この国のエネルギー政策で原子力発電所の建設を推進していかなければいけない。また、二十一世紀、展望しますと環境の時代と言われておりまして、安全性さえしっかり担保して国民の信頼をとれれば、百三十万キロワットの原子力発電所一基で二酸化炭素の排出量を〇・七%削減できる、こういうようなことがございます。
ですから、この中で推進をしていくに当たって、やはり推進側のサイドも、この安全、保安、そういうものに責任を持った人たちが、立地地域の皆様方や国民の皆様方と接して説明をさせていただくということも私は今後とも必要だと思っています。
しかし、今回の事案の中で、こういった状況になって国民の皆様方の信頼を大変損なったわけでございますから、私どもとしては、やはりこの原子力安全行政に今後層一層の万全を期していかなければいけない、そのためには、原子力安全規制の強化と、そして原子力安全委員会との連携と、それから原子力安全・保安院の独立性、そういったことをいろいろ御指摘いただいていますから、そういったことを踏まえて、国民の皆様方が納得できるそういう体制を、法案整備を含めて努力をしていかなければいけない、こういう基本認識であります。
○斉藤(鉄)委員 ダブルチェック体制をどう改善するかということの検討、これも大切だと思いますが、ある意味でアメリカ型の三条機関、いわばシングルチェック体制、その強化ということも考慮に入れた検討をぜひお願いしたいと思います。
二番目の質問に移りますが、これは経済産業省と原子力安全委員長にもお伺いするわけでございます。
刈羽村に行きました。そして品田村長さんとお会いをいたしまして、品田村長さんからは、先ほど田中委員の質問の中にもありましたけれども、新設時の基準だけではなく、運転中の経年変化も考慮に入れたいわゆる維持基準をつくる必要があるのではないか、これがなかったことが今回の問題の根底にあるのではないか、こういうお話がございました。
そして、東電の原子力発電所の第一線の技術者からもお話を聞きましたけれども、アメリカでは、アメリカ機械学会の基準、ASMEで、セクション3で製造にかかわる基準が定められている、そしてそれとは別に、セクション11で運転時の維持基準が定められている。そして、これは民間基準ですけれども、いわゆる10CFR、コード・オブ・フェデラル・レギュレーションという中にこれが組み込まれる仕組みになっている。この10CFRを見ておりますと、やはり運転時のメンテナンス、またインスペクションということが、基準が書かれております。そして、この基準は、年に一遍ないし二遍、定期的に改定を続けていて、常に最新の技術情報がこの基準の中に組み入れられるような仕組みになっている。まあ東電の技術者でしたから非常に控え目におっしゃっておりましたけれども、現場を預かる技術者としてはこういう基準があると非常にやりやすい、こういう声もございました。
品田村長さんの声、それからあるエネルギー評論家の中に、これはエネルギーのある雑誌ですけれども、エネルギー評論家が、「「安全上問題がないのに運転停止の恐れがある報告を避け、安定供給の責任を全うする」という、電力マン故の一種の「誠実さが故の罪」から現場作業者・監督者を解放する道でもある。」こういう、ある意味では非常に思い切った書き方がしてございましたけれども、こういう声もございます。
この維持基準について、経済産業省と原子力安全委員長のお考えを聞きたいと思います。
○佐々木政府参考人 御指摘のとおり、我が国の原子力安全規制におきます技術基準は、一定の強度など所定の性能を要求しております。したがって、どのような傷であっても、傷があることによって技術基準に適合しないということであるわけではございません。
しかしながら、当初からの状態に何らかの変化が起こった場合、技術基準を満たしているか改めて評価を行う必要があります。そういう意味で、これまでそのような評価方法は定められておりませんでした。
米国におきましては、今先生が御指摘になったとおりでございます。
我が国におきましても、このような海外動向を踏まえまして、状態の変化を評価する方法についての規格の検討を行ってまいりましたが、導入には至っておりませんでした。米国とは異なりまして、我が国では、米国機械学会のような学会等あるいは規格に係る検討の場が整備されてまいりましたのは最近でございます。
また、一方、行政におきましても、学会等の民間規格を国の規制基準として取り入れる仕組みが十分でなかったことが原因として考えられます。
いずれにいたしましても、国民の原子力安全に対する信頼性の回復が大前提ではございますけれども、設備の健全性評価手法によりまして、機器が満たすべき安全水準を維持しているかどうかを判断する、いわゆる維持基準の導入が必要だと考えております。原子力の分野における民間規格の基準として導入することにつきましても、あわせて、学会とも連携をとりつつ、法規制の中にも組み入れて今後検討してまいりたいと考えております。
○松浦参考人 原子力安全委員会委員長の松浦でございます。お答えいたします。
先ほどの御指摘にございますいわゆる維持基準でございますが、私といたしましては、今回の事案はいろいろ多様な条件が重なっていると思いますが、その中の一つが、確かに御指摘の維持基準にあると思います。
技術基準というのは、もともと科学技術的な知見それから経験に基づいて合理的に設定されるべきものだと考えております。原子力発電所の機器、設備は、建設時には適度の裕度を持って製作、建設されておりますので、運転段階に至りましたときには、それを考えて適切な維持基準に基づいて運営するのが合理的なものだと思います。
先ほどの保安院長のお答えにもありましたが、我が国では、既に機械学会におきましてそういう維持規格についての御検討が相当に進んでおりまして、本年二〇〇二年にはその第二版ができているということでございまして、そういうものを導入する科学技術的な知見は蓄積しているのではないかと思います。
なお、今回の事案におきましては、維持基準のほかにいろいろとございますが、その基本の一つに、安全に問題がなければ報告しなくてもいいではないか、そういう判断があったと。この判断は、私も、それによってその記録とか材料とかを隠ぺいしてしまって、それがかなりの期間続いたという、これはある意味で安全文化の問題だと思います。私は、特に、ほんの小さな傷のあるものでも、それを廃棄してしまったというのは、その後の安全研究等の可能性を摘んでしまうことになりますので、そういう点で今回はかなりゆゆしき問題を含んでいるというふうに考えます。
○斉藤(鉄)委員 先ほどの隠ぺい、これはもう絶対、幾ら安全という判断を技術者がしたとしても、それを隠ぺいすることは許されない、これは当然でございます。
その議論になりましたので、私は、どこまで技術者としての裁量が許されるのかという問題をちょっと質問したいと思うんです。
今回、具体的な事案は溶接部の検査でございます。溶接部の検査は、主に超音波探傷で行われております。私も現場の技術者でございますので、この超音波探傷の資格を取って実際にやったことがございます。超音波を溶接部に入れる。そこから反射波が返ってくる。その反射波の状況を見ながらそれを判断するわけですけれども、もちろんいっぱいいろいろなものが返ってきますので、一次情報としては非常に複雑でございます。その複雑な一次情報を、技術者が経験と資格でそういうものを判断しながら、これは欠陥なんだろう、これは欠陥ではない、問題ないところからの反射波だということを判断するわけです。
今回、傷と認定されたものの隠ぺい、もちろんこれは許されないわけですけれども、いろいろな報道の中に、その技術者が、これは問題のない反射波であるという判定をしながらも、ある意味では全くのノイズ、それさえも報告をしなかった、すべて報告しなければいけないというふうな、全く非科学的な報道等もたくさんございました。
私は、技術者たる者、技術者の裁量が許されていい、このように思います。そういう基準でなくては、一次情報をすべてオープンにしろと言われても、そんなことは現実にできませんので、また結果として同じような隠ぺいというようなことになりかねません。この点を、技術者の裁量をどこまで許すか。技術者の誇りとそういうものを考慮に入れたそういう維持基準をつくっていただきたい、このように思います。
時間がなくなってまいりましたので、最後に、経済産業大臣と文部科学副大臣にお聞きいたします。
柏崎の西川市長にお会いしました。西川市長も、大変今回の事案、心配をされておりましたけれども、一番印象的だったのは、地元住民として、原子力発電所の安全性、これが一番大事なんだ、そして、その安全性を支えている原子力技術者、その技術者に、今まで、ある意味で原子力に対する不当なバッシング、非科学的な不当なバッシング等が続けば優秀な人が現場に行かなくなる。今、日本社会を根底で支えているこの技術、ここにやはり優秀な人が行くようなそういう社会でなくてはいけない、その点を一番心配しているんだ、このようなお話もございました。
これからの日本社会にとって、原子力、私は、高速増殖炉までやって原子力を国産エネルギーにすべきだ、このように思っておりますけれども、それには優秀な人材が行かなくてはなりません。そして、国民の安全という意味でも優秀な人材が行かなくてはなりません。現実はそうなっていなくなっているのではないかという地元の西川市長の質問に対して、どのように御見解をお持ちでしょうか。
○西川副大臣 原子力は、先生御案内のとおり、資源エネルギーという面も極めて濃厚でございますが、それ以上に、技術エネルギーと申し上げてもいいような点があると思います。そういう意味で、先生御指摘のように、この分野に優秀な人材を確保し育成するということはまことに重要なことであり、しかも、これは、先ほど来の御議論にございますように、原子力の安全性を確保するという意味でも不可欠の要素ではないかというふうに存じております。
当省といたしましては、この重要性にかんがみまして、産学連携による原子力技術関連の研究開発の環境を改善する、間接的な形ではありますけれども、そういう形で、まず人材を確保していきたい、こう考えております。
しかしながら、こうした分野に優秀な方々に将来継続的に参入をしていただくという意味では、我が国のエネルギーセキュリティーに貢献をしている、こういう、先ほど先生のお言葉にございますように、技術者としての自負も加えて、そういうものを持っていただく必要があるというふうに存じまして、今回の事件で国民の信頼を失う、こういうことになりましたことは、今、先生の切り口と申しますか、こういう観点からも大変ゆゆしいことである、こう思っておりまして、まずは信頼の回復をぜひ遂げていかなければこの問題のスタートにもならない、このように考えているところでございます。
なお、広く国民の認識という点で、原子力エネルギーに関する教育も極めて重要でございまして、文科省にもこの点については近年多大な御努力をいただいておりますので、当省といたしましてもできる限り側面的に御支援をさせていただいて、この分野の充実を期してまいりたい、このように考えております。
○渡海副大臣 このたび文部科学副大臣に就任をいたしました渡海でございます。私の担当は科学技術を担当しろということでございますので、当委員会にも大変お世話になると思います。どうぞよろしくお願いを申し上げます。
それでは、斉藤委員の質問にお答えをさせていただきたいと思いますが、原子力の安全を支えるという意味での技術者を確保する、こういうことが非常に大事だという御指摘だったと思います。
私どもは、そのことはもちろんでありますが、それのみならず、まず、非常に幅広い分野にわたって、この原子力の研究開発というものは大変重要だという認識でございます。放射線の問題、加速器によるさまざまな分野、ライフサイエンスとか、また、最近のナノテクノロジーの問題、物質・材料の問題、こういう問題も含めて、この技術者、研究者を育てるということは大変大きな課題である、こういう認識のもとで努力をさせていただいておるところでございます。
ただいまも西川副大臣のお話にもあったわけでありますが、まず、この原子力に取り組んでいただくためには、やはり安全と信頼というものをしっかりとつくっていかなければいけない、この努力を政府一体となってやっていくことが大事でございまして、当省といたしましても、その点につきましてもさまざまな努力をしていきたいというふうに考えておるところでございます。
まず、具体的なさまざまな教育の分野において、やはり子供のころからいろいろ興味を持ってもらう、これが大事だろう、そんな観点もございまして、初等教育、中等教育の中で原子力を正しく理解してもらうような教育をしていく。そして同時に、大学において原子力に関する研究者を育てるということも大変大事でございまして、資源配分の中でそういった施策を講じていきたいということも考えております。
同時に、原子力に関しては、技術者を対象とした研修制度を現在もつくっておりまして、例えば、日本原子力研究所等による原子力技術者を対象とした研修、また、原子力安全技術センターによる原子力防災管理者の講習等も行っているところでございます。
今後とも、関係省庁と連携をとりながら協力しつつ、原子力の安全確保に万全を期するように努力してまいりたい、このように考えておるところでございます。
○斉藤(鉄)委員 時間が来ましたので、以上で終わりますが、地元の首長さんたちのこの切実な思いをどうかこれからの行政に取り入れていただきたいと思います。
終わります。