【衆議院予算委員会 平成13年5月14日】
○斉藤(鉄)委員 公明党の斉藤鉄夫でございます。
小泉総理、今、町では、今回の小泉政権の誕生は一種の平時の革命だなというような声もございます。私もそう思いますし、またそうしなければならない。
革命といいますと、資本主義、共産主義という経済体制の転換ということですが、我々の転換はもっと奥深い大きな転換でなければならない。すなわち、これまで経済大国を目指し、達成し、しかし、バブルがはじけて今行くべき方向を見失っている、そういう中で本当に私たちがもう一度この日本のあるべき姿、世界から尊敬をされる国のあるべき姿を見つけ出す、そういう大転換でなければならない、このように思います。
そういう意味で、きょうは私、総理それから文部科学大臣に文化政策、文化芸術政策について質問をさせていただきたいと思います。
その前に、総理は音楽、特にオペラが大変お好きだ、こういうふうにお聞きをしました。新聞にも先日コンサートを楽しまれたと出ておりましたけれども、ふだんどのような音楽、芸術を楽しまれているか、まずお聞きいたします。
○小泉内閣総理大臣 私は、音楽は好きなんですが、オペラだけじゃなくていろいろな音楽が好きなんですよ。だから、音楽を聞く点に関しては、どの国会議員よりも私が一番聞いているのじゃないかと自負できるぐらいいろいろな音楽を聞いています。
そこで、クラシックが好きなんですが、オペラだけじゃありません。よくオペラが好きだと言われていますけれども、あれは豪華けんらんな総合芸術ですから、行くとなると、やはりオペラに行った方が楽しめる。ふだんは、CD等では普通のシンフォニーとかコンチェルトとかいろいろなのを聞いているのです。
私は、子供のころからロックのエルビス・プレスリーも好きです、今でも好きです。あるいは演歌も好きです。映画音楽、現代音楽も好きです。X―JAPANも好きです。だから、クラシック、ポピュラー、演歌を問わず、何かしら聞かないとおかしくなるぐらい音楽が好きなのは事実であります。
○斉藤(鉄)委員 まさに文化芸術が生き方の、生活の根本にあるというのを、また非常に造詣が深いということを感じさせていただきましたけれども、結論から申し上げますと、私ども公明党は、二十一世紀の日本のあるべき姿は文化大国、文化芸術大国でなければならない、このように提案をしております。
それでは、文化大国というのは何かといいますと、それは、私たち一人一人が創造性が重んじられ、自立をしていくその基礎になるもの、これが文化でありますし、今都市化が進んで大変個々人がばらばらになっておりますけれども、文化というやわらかいきずなで私たちを結んで、同じ時代、同じ空間を今私たちは生きているんだ、したがってこの社会をよくしていこうというふうに、みんなをそういう気持ちにさせるもの、これが文化だと思います。また、日本の固有の文化を世界に紹介し、貢献し、そして信頼される国家、これが二十一世紀の日本のあるべき姿、文化国家ではないかと思います。
ここで、一つクリアをしておかなければならない問題があります。
そういう文化芸術大国を目指していくためには、いわゆる国家の支援、税金による支援ということがどうしても必要でございます。しかし、文化芸術というのは、先ほど総理がおっしゃいましたように、極めて個人的なものでございます。つくる方も自由な精神の発露としてつくります。また、それを楽しむ方も自由な精神のもとでの楽しみ方でございます。あくまでも個人的なもの。しかし、文化芸術大国をつくっていくためには国の支援が必要だ。この公の支援と自由な精神の発露、これを結びつける理念を私たちは持たなければ、文化芸術大国を目指して国が支援するということにならないわけでございます。
第二次大戦後、一九四六年、イギリスに英国芸術評議会というものができまして、文化芸術に対して国が積極的に関与していこう、振興していこうということを決めるわけですが、その初代議長があの経済学者のケインズでございます。そして、ケインズが、BBC放送を通じて全国民に次のように訴えます。第一に、この評議会は、芸術文化の創造者や専門家の芸術の自由を保障し、その成果を国民がひとしく享受し得るようにする、第二に、芸術文化に対する公的な援助は自由を擁護する政府の責任であると。
すなわち、自由、国民の自由の擁護のため、また国民の精神の自由の擁護のために国の文化芸術支援政策があるんだという大理念でございまして、私は、ここに公の援助と、しかし自由に属する芸術文化の活動とを結びつける理念があると思うわけでございますが、総理の文化芸術に対する基本的な考え方をお伺いいたします。
○小泉内閣総理大臣 文化芸術の重要性は、私もよく承知しているつもりであります。
音楽のみならず、芝居に行きましても、一つのあるべき姿など、芝居を通じて、ああ、人間かく生きたいな、自分もこういうふうに生きたいなと教えられるのは、芝居を見ても多いですね。そして、沈んでいるときには音楽を聞いて勇気づけられる場合もたくさんある。また、芝居を見て、ああ、自分もまた頑張ろうという気持ちを起こさせるような芝居もたくさんある。だから、人間生活に非常に大きな影響を与えるのが文化芸術だと思います。
私はもし、わがまま、独断が許されるんだったらば、ワグナーの芸術に魅入られて、ルードウィヒ、当時の王様が、国家財政を破綻に導かせるぐらいワグナーにのめり込んで、ワグナーを育て上げましたね。王様として、政治家としては非常に批判されていますけれども、いまだにドイツ国民はワグナー芸術を育てたということで敬愛している。だから、それほど文化芸術というのは多くの国民に潤いと一つの安らぎ、励みを与えると思うのであります。
特に、いいものはなかなか、それを見きわめて援助する人がいないと残らないのも文化の一つの宿命だと思いますので、民間の活力をどうやって文化芸術振興に生かすか、同時に、足らざるところを公的な支援がどの程度まで必要かというのは大事でありますので、斉藤議員のいろいろな御提案等も聞かせていただきまして、私の内閣でも支援できるところがあれば、ぜひとも支援したいなと。もっと文化芸術の重要性というものを国民が理解してくれることによって、質の高い生活が維持でき、発展していくのではないかということを思っております。
○斉藤(鉄)委員 大変、文化芸術に対する深い理解と哲学、その哲学で政治を運営されれば本当にすばらしい政治になるのではないか、私はこのように思います。
しかし、町でこれを話しますと、この大変厳しい景気の状況の中、不景気の中、何が文化芸術だという声もございます。しかし、今の日本以上に厳しい経済状況であった第一次大戦後、一九三〇年代のアメリカ、ここに文化芸術政策の一つの学ぶべき点があります。
一九三〇年代、ルーズベルト大統領があの大恐慌を乗り切るためにニューディール政策を行うわけですけれども、ニューディール政策、新規まき直し政策といいますと、我々はどうしても、テネシー渓谷開発公社だとか、ダムをつくったり、土木事業中心というイメージがあるんですが、しかし、勉強してみますと、このニューディール政策のもう一つの大きな柱が、実は文化芸術政策でした。フェデラル・ワンとして知られておりまして、連邦美術プロジェクト、連邦音楽プロジェクト、連邦劇場プロジェクト、連邦作家プロジェクト、歴史記録調査、五つのプロジェクトを設ける。
美術プロジェクトは、五千三百人の美術家を政府が直接雇用して、二千五百カ所の公共建築物を使用した壁画制作、一万八百の絵画、一万八千の彫刻をつくる。
それから、音楽プロジェクトでは、あのクリーブランド・オーケストラの指揮者のニコライ・ソコロフがプロジェクトリーダーになりまして、一万六千人の音楽家を直接雇用する、それで毎週およそ三百万人の聴衆を前に公演を行う。教育面では、十三万二千人の老若男女が毎週音楽教育を受ける。
それから、劇場プロジェクトでは、これは有名なハリー・フラナガンがプロジェクトリーダーで、一万二千七百人の劇場関係者を直接雇用、毎月千公演、観客は百万人、そのうち七八%は無料公演。あの大不景気、大恐慌の中で、もう徹底した文化芸術政策を遂行しております。
そして、そのことが、実は不景気で沈んでいたアメリカ国民の心に明るさを取り戻し、よし、アメリカ国民として頑張っていこうという勇気を奮い起こさせた。そして、そのことが、第二次大戦後、芸術の中心がパリからニューヨークへ移り、ブロードウエーのミュージカルがあの繁栄を示し、そして西海岸ではハリウッドが巨大映画産業に成長していく基礎になった、こう言われております。
不景気の今だからこそ、この文化芸術というのを大切にしなくてはいけない、こう思うわけですが、しかし、日本の文化芸術政策、大変お寒い状況でございます。ちょっと図を……。
これは国家予算全体に占める文化関係予算の比率ですが、フランスは、やはり文化国家フランス、国家予算の一%です。日本はその十分の一、〇・一%でございます。お隣の韓国は〇・六%程度でございます。ヨーロッパは、国家で直接支援をする直接支援が非常に大きいということがわかります。アメリカが非常に小さいわけですけれども、これは実は、先ほどのニューディール政策のときの国家直接支援が非常にうまくいきまして、先ほど総理がおっしゃいました、うまい民間支援の形に移っていきます。つまり、税制で援助して、民間支援という形になります。
そのアメリカと日本の民間支援を今度は比較してみますと、日本には特定公益増進法人制度がございまして、いわゆる寄附をすれば寄附をした人が税制優遇が受けられるというものでございます。アメリカはパブリックチャリティー制度でございます。しかし、文化芸術関係は、日本はわずか五十六、アメリカは、七十万と書いてございますが、これが全部文化芸術関係ではございませんが、数万あると言われております。その結果として、日本の芸術文化関係の寄附金額は二百億円、アメリカは、八割が個人ですけれども、一兆一千三百億、日本の六十倍でございます。先ほどと同じようにグラフにしようと思ったのですが、グラフにしますと日本がほとんどゼロになるものですから、グラフにできなくて数字で書きました。
このように、民間支援それから公的支援、ともに日本は非常に文化芸術に対して支援が少ないという状況がわかっていただけたかと思うのですけれども、これを見てどのようにお感じでしょうか。
○小泉内閣総理大臣 実際にそういうグラフ、実績で指摘されてみますと、なるほどな、文化の重要性を口で言っても実績で残さなきゃいかぬなということを感じております。
これから文化関係予算につきましても、塩川財務大臣おられますが、今後、予算配分も変えるということを言っているわけでありますので、私も、どこまでできるかわかりませんが、今の斉藤議員の提案を誠実に受けとめて、日本も世界の先進文化諸国に遜色のないような文化予算のきっかけをつくってみたいなという意欲がわいてまいりました。
○斉藤(鉄)委員 ありがとうございます。
我が国の文化、芸術への支援の少なさは、文化活動の中核となっている文化、芸術を職業としている人たちの所得にあらわれております。
芸術家団体の調査によりますと、芸能実演家の平均年収は何と四百七十七万円。先日、あるオーケストラの方の話を伺いましたら、日本を代表するオーケストラ、そのトップアーティスト、本当に一流の演奏家ですけれども、この方の年収が何と四百五十万円ということでございました。文化庁の調査によりますと、プロの芸術家で芸術活動だけの収入によって生計を立てている人は、わずか一五%だけでございます。
そのためにも国の支援をふやしていかなくてはならないのですけれども、国の支援の仕方に、先ほど申し上げました、よくアメリカ型、フランス型と言われているそうです。アメリカ型というのは、民間の寄附が集まるようにする。これはまあしかし、それに税の優遇をしているわけですから、税金が安くなるわけで、間接的な国の支援でございます。税金を直接投入する、これがフランス型でございます。
まずアメリカ型、先ほど総理もおっしゃった民間活力ということでございますが、その典型であるアメリカ型についてちょっとお話をさせていただきたいと思いますが、寄附が集まりやすくするということでございます。(パネルを示す)本当にポンチ絵で申しわけないのですが、芸術家、芸術家団体。企業が寄附をすれば、これは一般寄附金も損金算入されますが、芸術文化関係については損金算入限度額がその分だけふえるという形で優遇税制をされております。個人については、寄附をすればそれが所得控除になりまして、後で税金が返ってくるというものでございます。
しかし、現在、この芸術団体として、先ほど申し上げました特増法人の五十六しかないわけでございます。身近にないから私たちも寄附しようという気持ちにならない。
この制度でございますけれども、まず文部科学大臣にお伺いしますが、この特増法人、もっと芸術文化関係の公益法人はたくさんございます。そういうたくさんある公益法人、もちろん公益性について厳密にチェックすることは当たり前のことでございますが、そういうチェックをして、この基準を緩和し、もっともっと寄附が集まるようにすべきだと考えますが、いかがでしょうか。
○遠山国務大臣 先ほど来の質疑応答を聞いておりまして、総理から大変力強い日本の文化振興についてのお約束といいますか、お話がございましたので、もう私も申し上げることがないくらいと思っているところでございますが、まさに先生が仰せのとおり、一国の文化芸術、そういうものを高めていくことは、個人の心が豊かになるだけではなくて、社会も潤い、また、一国としてのイメージもよくなり、それから国際的にも、日本の国を見る場合にすばらしいイメージをつくることもできるわけでございまして、広い意味では日本の安全保障にもなるぐらいに思っております。
今の件でございますが、確かに国によってそれぞれの芸術振興のための制度も違い、あるいは組織も違いということで、一概には言えないのでございますけれども、やはり、日本の場合に、芸術公演団体あるいは文化芸術活動への助成を行う団体について特定公益増進法人として認めておりますけれども、ただ、五十六でございます。しかもそれは、プロの芸術家たちだけを相手にして、しかも、そのプロの芸術家たちの活動が七割以上芸術活動である場合の団体についてなどの厳しい基準によって認められているわけでございます。
御提案は、さらに民間からの文化芸術活動への支援を活性化するためということの大変有意義な御提言と私は考えております。文部科学省といたしましても、その趣旨を踏まえながら、民間からの支援の促進方策について幅広く検討してまいりたいと思います。
○斉藤(鉄)委員 ぜひその検討をお願いいたします。
ここで一つ、勉強していくうちに大変おもしろい制度があるのに気がつきました。いわゆる企業メセナ協議会でございます。この企業メセナ協議会は、五十六ある特定公益増進法人の一つでございます。この企業メセナ協議会を通じて寄附をすれば、かなりいろいろなところに寄附ができて、それが税制の優遇が受けられるという制度があります。
具体的には、芸術団体が寄附者、個人または企業に寄附の依頼をする。この寄附者は企業メセナ協議会を通して、それでこの企業メセナ協議会は一円もピンはねすることなく、一〇〇%指定したところに寄附金が行く。そして、この企業メセナ協議会は特増法人ですので、税の優遇が受けられるという制度でございます。しかし、現実には、この芸術団体、個人というのは今大変限定をされておりまして、プロの公演団体もしくはプロの個人、また公益性ということも厳しく問われております。
それを、先ほど総理がおっしゃいました、民間がいかに支援をするかという仕組みを考えていきたい、これを大きく使っていったらどうかと思うわけでございます。もちろん公益性は大変大事でございますが、今、町では、本当に町の文化を保存していこう、また子供たちの教育、町での地域と学校と一体となった教育という形、それを振興する意味でも、地域で大変文化芸術の普及に頑張っていらっしゃる方がたくさんいらっしゃいます。また、いわゆる町の芸術家と言われる人たち、小さな教室だけれども、その地域の文化芸術の維持発展に懸命に、自分の懐からお金を出しながら頑張っていらっしゃるという方も地域にたくさんいらっしゃいます。
そういう方、もちろん公益性ということについて、税務当局も文化庁もこの企業メセナ協議会もきちんとチェックをしなければいけない、これは当然でございますけれども、そのチェックの後、公益性が認められれば、この企業メセナ協議会の制度を大きく活用して、幅広く税の優遇が受けられる。このようにすれば、アメリカ型の民間による文化芸術支援、そして、それはある意味では国が間接的に支援していることになるわけですけれども、こういう制度を大きく使っていったらどうかと思いますが、文部科学大臣、いかがでしょうか。
○遠山国務大臣 企業メセナ協議会は、御指摘のように平成二年に設立されておりまして、平成六年には特定公益増進法人に認定されたところでございまして、これは、民間の御協力を得ながら芸術文化活動を支援していくという意味で大変有益な活動をしていただいております。
さりながら、平成六年からそういうふうにやっていただいておりますけれども、平成十二年度の実績を申し上げますと、八百七十九の会社、個人からの寄附金に基づきまして、芸術文化団体の行う百六十五件の事業に対し、総額五億三千万余ということでございます。先生の御構想の広大なお考えとはややまだ差があろうかと思います。
文部科学省といたしましても、先生の御提案を十分考えさせていただきまして、またこの問題についても検討してまいりたいと思います。
○斉藤(鉄)委員 総理、先ほど、民間活力を活用する文化芸術政策、特増法人を大きく広げていく、またこの企業メセナ協議会を活用するという提案をさせていただきましたけれども、いかがでございましょうか。総理の御感想をお聞かせ願えればと思います。
○小泉内閣総理大臣 外国のいろいろいい例も参考にしながら、また今斉藤議員の提案も参考にしながら、実際どのように有効にそのお金が生きていくか、またそういう文化芸術振興策につながるか、よく検討させていただきたいと思います。
○斉藤(鉄)委員 次にフランス型、いわゆる国の直接支援による文化芸術振興策についてお伺いします。
奨学金についてでございます。これまで日本育英会奨学金といいますのは、いわゆる学校法人に所属している学生に対する奨学金でございました。しかし、この文化芸術の分野では、小さな教室でレッスンを受けている、学校法人になっていない教室でレッスンを受けてプロを目指している、また、いわゆる個人について、お師匠さんについて一生懸命わざを磨いている、こういう人もたくさんおります。
そういう人はこの奨学金の対象になっていないわけですけれども、若い文化芸術の担い手を育てるという意味で、今ではもうなかなかお金持ちの子弟しか芸術家になれないという現実もございます。
そういう意味で、文化芸術奨学金制度というのを新たにつくって、これは文化庁に基金を置き、当然厳正な選定基準等を置く必要があるかと思いますけれども、こういう制度をつくってはいかがかと思いますが、文部科学大臣、いかがでしょうか。
○遠山国務大臣 新進若手の芸術家を育成していくということは大変重要なことであると思いますし、その支援のための施策といたしましては、これまでも芸術フェローシップによる若手芸術家の研修機会の提供とか、アーツプラン21による芸術団体の人材養成事業に対する支援などをやってまいりました。
御提案の、小規模な教室などでプロを目指して個人的にレッスンを受けている芸術家に対しての支援につきましての奨学金制度の整備ということについての御提案は、大変御示唆に富むお考えかと存じます。そういう御提案も含めて、全体としてこの分野の支援を増すための方策を検討してまいりたいと思います。
○斉藤(鉄)委員 すぐれた文化芸術を継承、発展させる、また私たち日本が持っている固有の芸術文化を伝承し、発展させていく、そのためには、若い人たちに、若い才能のみずみずしい生命力のうちから伸びてもらう教育をする必要があるかと思います。
そういう意味で、先ほどフェローシップ制度の話がございましたけれども、現在のフェローシップ制度、つまり芸術家の国内留学、海外留学等でございますけれども、非常に狭い、パイプの細いものでございます。芸術大学の中でもトップクラスのわずかな人しか行けないというふうなものでございますので、これをもっと拡充するなどで若い才能を育てるということにももっと力を注ぐべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。
○遠山国務大臣 斉藤先生御指摘のとおりでございまして、その分野の充実も大変重要だと考えております。
御存じのように、これまで若手の芸術家の支援につきましては、最も有効に働いておりますのが芸術家在外研修という制度でございます。昭和四十二年にこの制度ができまして以来、非常にすぐれた芸術家たちが、この制度を活用して欧米の諸国でわざを磨き、世界水準の実力を身につけていただいております。
例えばソプラノ歌手の佐藤しのぶさん、それからバレエの森下洋子さんを初めといたしまして、すぐれた芸術家がこの制度によって自己研さんをし、そして、今日の日本の文化水準ないし世界の文化水準を高めていただいていると思いますけれども、なお、先生おっしゃいましたように、そのパイプについても考えていかないといけませんし、また、芸術インターンシップという制度がございまして、日本の若手芸術家に国内研修施設などで研修の機会を提供していくという事業もございますが、これがわずかに一年で六十四人を対象というようなことでございます。
今御提案の趣旨も含めまして、若手の芸術家への支援について、さらに一層充実のための政策を考えてまいりたいと存じます。
○斉藤(鉄)委員 文化芸術と教育について、ちょっとお伺いします。
子供のころに本物の文化芸術に触れるというのは、本当に人格形成に大きな影響を与えます。私も、島根県の山奥で生まれまして、いわゆる石見神楽というのが大変盛んな地域でございまして、ちっちゃいころから本当に、私の村にテレビが入ったのは私が中学校一年のときですから、小学校時代はまさに神楽を見て育ったような人間でございます。本当に私は日本の誇るべき伝統芸能だと思いますし、私の人格形成にあれが非常に大きな影響を与えたと自分でも思っております。今でもそのはやしを聞きますと体が踊ってまいります。そういう機会が今の子供たちになくなってきているのではないか。学校も芸術文化を教えない、地域も教えない、そういう状況になってきております。
そういう中で、もっともっと学校に子供たちが本物の文化芸術に触れる機会をふやすべきではないか。例えば、今文化ホールがたくさんできましたけれども、ほとんど使われていないと言われております。ここで地域の伝統芸能でありますとか芸術家の公演をする。そこに子供たちが行く。また、舞台裏を見る。また、学校にも行く。また、地域の文化芸術のリーダーに学校のクラブ活動に行って直接指導してもらう。こういうことも教育改革の一つになるのではないか、このように思いますが、いかがでしょうか。
○遠山国務大臣 子供たちがすぐれた芸術文化に接するということは、非常に豊かな心をはぐくむ面で大変大事だと思っております。
たまたま私は、十年以上前でございますが、中学校課長をいたしておりまして、荒れた教室ということで全国が騒然となったときがございます。そのときに、中学校芸術鑑賞教室ですか、そういうものの授業がございまして、そのすぐれた演奏を聞いた子供たちの感想文を読んだことがございます。それは、大人のしっかりした、本物のプロが各学校に行きまして、そして見事に演奏してみせる。そのときの、整然とした、しかも美しいメロディーが流れてくることによって、自分たちは初めて本物の芸術に触れることができた、この感動を忘れることができないという綿々たる感想文をたくさんいただきました。
また、ついせんだってまで国立西洋美術館で勤めておりましたけれども、都内のある中学校の先生が子供たちを連れてきまして、そして美術館を見せてくれました。そのときに、子供たちが学校に帰り、その感想文を寄せてくれました。その中身もまた、今までの自分たちの知見の中になかったすばらしい芸術に触れることができて、その感動がいかばかりであったかということが非常に率直に、素直に、しかし感動を持って書かれておりました。
そういうことから考えましても、私は、本物の芸術に触れるということがいかに幼いとき、小さいときに人々の心を豊かにする源になるかということをつくづく実感した次第でございます。
そのようなことから、今申し上げましたような授業としての芸術文化ふれあい教室を今年度から始めようといたしておりますし、さらに、公立文化会館もたくさん各地にできております。そのような会館を利用しまして、すぐれた舞台芸術の鑑賞だけではなく、公演の背後にある舞台裏の装置とかそういうものを見ていただくような体験、あるいは学校の文化部活動を盛んにするようないろいろな支援の実施など、本物の芸術文化に触れてもらう機会をますます充実してまいりたいと思います。
○斉藤(鉄)委員 ちょっと細かい問題になりますが、芸術文化団体の方からいろいろヒアリングをする中で、こういう懸念が示されました。
いわゆる邦楽、日本古来の音楽でございます。来年度の学習指導要領から邦楽がカリキュラムに入ってまいります。しかし、学校現場ではそれを教えられる人はだれもいない。ピアノは弾けるけれども、尺八は吹けない、こういうことでございました。しかし、地域には邦楽を支えていらっしゃる地域のリーダーがいらっしゃる。そういう方も学校に来て指導できるような体制等をとらないと大混乱が起きる
という声も聞きましたけれども、この点について、ひとつ。
○遠山国務大臣 確かに、だれがどのように教えるかということはその教育の成果を高める点で大変重要でございますが、今の御指摘の点につきましては、三つの方策を考えております。
一つは、教員養成のレベルでございますが、邦楽を指導できる教員の養成のために、中学校、高校の音楽の免許状の取得要件といたしまして邦楽に関する内容を必修としたところでございまして、今年度から大学の教職課程において実施されております。
二番目は、現職教員の研修についてさらに力を入れようということでございまして、国立劇場の協力も得まして、日本の伝統音楽についての解説あるいは講演を行う伝統音楽研修会を開催するなどをいたしております。
第三の点は、まさに御指摘のとおり、各地に、教員免許状はお持ちではないですけれども、いろいろな邦楽のわざを持った、あるいは心を持った人たちがおられるわけですね。そういう方を招きまして、社会人を非常勤講師に充てる特別非常勤講師制度、あるいはボランティアの活用によって邦楽に関する外部人材の積極的な活用を図って、学校教育を充実してまいりたいと思っております。
○斉藤(鉄)委員 現場ではかなり心配されているようでございますので、よろしくお願いいたします。
文化芸術関係、最後の質問です。大臣と総理にお答えいただきたいと思います。
文化芸術振興についてこれまでいろいろ提案をしてまいりました。国が、また地方公共団体が税金を使って、もしくは税金を安くして文化芸術を支援する、これは大変なことでございます。そういう意味で、その基本となる、法律的な根拠を与える基本法、これは文化芸術基本法といいましょうか、振興基本法、いろいろな名前があるかと思いますけれども、こういう法律を定めるべきだと私ども提案をしているところでございます。
この文化芸術基本法もしくは振興基本法についてのお考えを大臣と総理にお伺いいたします。
○遠山国務大臣 文化の分野につきましては、現在、文化財保護法でありますとか著作権法など個別の法体系はできているのでございますが、御指摘のように、芸術文化の全体的なプランに基づいて振興していこうということにかかわる法律はございません。
今の御提案につきましては、大変貴重な御示唆を含んでいると考えております。今後その御趣旨も踏まえて十分に検討してまいりたいと思います。
○小泉内閣総理大臣 文化芸術と一口に言っても、その範囲というのは広範多岐にわたると思います。今文部科学大臣言われたように、趣旨については私も賛同でありますので、どういう法律がいいのか、また法律以外によってどういう振興策があるのか、それも含めまして検討をさせていただきたいと思います。
○斉藤(鉄)委員 ありがとうございます。よろしくお願いいたします。
それでは、最後に総理に、文化芸術とも関係いたしますけれども、教育の問題、教育改革について御質問させていただきます。
今国会は教育国会になるというふれ込みでございました。教育改革国民会議の提言を受けまして、例えば教壇に立ってほしくない先生、その配置転換を可能にする法律など、今、国会に提出をされております。大いにこの教育改革について議論をしたいところですけれども、まだ議論の緒にもついていないというところでございます。
教育改革について、小泉政権になって少し熱が冷めたのではないかというふうな論調もあるところでございますが、先ほどの文化芸術についてのお話を聞いて、そんなことはない、非常に根本的なところで教育改革を考えていらっしゃるということがよくわかったわけでございますが、教育改革に対しての総理のお考えを最後にお伺いいたします。
○小泉内閣総理大臣 確かに、私の所信表明演説の中には教育改革という言葉が少ないじゃないかという御批判はいただいておりますが、基本的に、森内閣が最重点課題として掲げた教育改革、その点は引き継ぎたいと思っております。すべてを変えるということじゃなくて、いいものは当然継続、発展させなきゃならないという視点で、言葉は短かったんですが、教育改革の重要性は私の所信表明演説でも触れたつもりであります。
中には、米百俵精神を言ったのはいかなる教育論よりもよかったというお褒めの言葉までいただいているくらいでありますので、私は、教育改革というのはそれぞれの人が意見を持っておられる。教育論を言わなくても、これは大きく教育論につながるような発言もたくさんあるわけです。
そういう点も含めて、教育、人材づくり、これは一番大事なものであるということをわきまえつつ、いかに有為な人材がこれからの日本に羽ばたいていくか、また国際社会で活躍していけるか、こういう点は本当に基本的な大事なことでありますので、今の文化、芸術のみならず、教育全般にわたり、大きな視点から取り組んでいきたいと思っております。
○斉藤(鉄)委員 ありがとうございました。
同僚議員とかわります。