【衆議院文部科学委員会 平成13年10月31日】

○斉藤(鉄)委員 公明党の斉藤鉄夫でございます。
 私は、今年度始まりました科学技術基本計画二期目の状況について質問をいたします。
 平成七年に科学技術基本法が成立をいたしました。平成八年度から五カ年、これが科学技術基本計画第一期だったわけでございます。そして、その反省を踏まえて今年度から二期が始まり、今ちょうど半年を過ぎたところでございます。このあたりで、この基本計画の二期の進みぐあいについて国会としてきちんとチェックをし議論をしておくということは大切なことだと思い、質問をさせていただきます。
 まず最初に、科学技術基本計画、五カ年の一期、この反省と、それからその反省を踏まえて二期目のポイントは何かということについて質問をさせていただきます。
 私の理解は、一期目は、とにかくお金、科学技術にお金を費やすということでポイントがあった。実際お金はついた、現場はお金じゃぶじゃぶ状態になったけれども、なかなかそれがうまく使われなかった、その反省を踏まえて二期目は評価ということを取り入れた、私はこのように理解しておりますが、このことについて政府の考え方をお聞きします。

○山元政府参考人
 事実関係でございますので、私の方からポイントを御説明させていただきます。
 第一期の基本計画、平成八年から十二年までの五年間の計画ということで、本年三月に終了したところでございます。
 それで、この第二期の基本計画を策定する際に、まさにこの五年間の評価がなされました。その中での成果といたしましては、今先生おっしゃいました、まさに計画期間中における必要経費としての目標の十七兆円の達成、これがあったかと思います。
 そのほかに、ポストドク一万人支援計画はほぼ達成されたとか、あるいは論文数、引用度数が増加傾向を示したとか、あるいは評価についても、平成九年度に評価の大綱的指針がつくられて、導入が始まったわけでございます。
 しかし一方で、反省点が多々ございました。例えば人材の流動性の向上がまだ不十分だとか、あるいは評価につきましても、評価結果の資源配分とか処遇への反映、あるいは評価プロセスの透明性、こういうものが不十分であったとか、あるいはいろいろな研究施設についての改善も余りなされてなかったとか、あるいは、これは計画そのものの立案にかかわるところではございますけれども、第一期の基本計画を策定するときに時間的な制約もございました、そういう中で、国として重点的に取り組むべき科学技術の目標、これが計画としてつくれなかったとか、こういうところが反省点としてあったかと思います。
 このようなことを踏まえまして、この第二期の基本計画のポイントとしては大きく二つあろうかと思います。一つは、科学技術の戦略的な重点化を図っていこうということでございます。それから二つ目は、すぐれた成果の創出、活用のための科学技術システムを改革していこうじゃないか、大きくこの二点があるのではなかろうかと思います。
 前者の重点化につきましては、大きく二つ言わせていただきますと、一つは、やはり何といっても基礎研究を大いに推進していくということ、それから、国家的、社会的課題に対応いたしました研究開発の重点化を図っていこう、この二つになるのではなかろうかと思います。その重点化としては、ライフサイエンスとか情報通信、環境、ナノテクノロジー・材料、特にこういう四分野の重点化が示されておるところでございます。
 二つ目の科学技術システムの改革の方でございますけれども、これも幾つかございますが、例示といたしましては、研究開発システムの改革として競争的資金、これをできるだけふやしていこうじゃないかという話、あるいは産学官連携の仕組みをさらに改善していこうじゃないかとか、あるいはいろいろな人材の養成、このあたりについてもさらに力を入れていこうとか、多々あろうかと思いますが、御説明はこのあたりでとどめさせていただきます。
 以上でございます。

○斉藤(鉄)委員 一期目の反省点として、評価がなかった、それから科学技術戦略というべき目標がなかった、それを踏まえて二期目は戦略的重点化を行った、こういうことかと思います。
 それでは、その一つ一つについて現状をお伺いします。
 まず、基礎研究が大事だ、私も本当にそのとおりだと思います。その基礎研究に対して、公正で透明性の高い評価による研究水準の向上というのが二期目の重要政策の一番初めに来てございます、基礎研究を大事にすると。その基礎研究を進めるということで大事なのは公正で透明性の高い評価なんだということですが、これは具体的にはどのように進んでいるのでしょうか。

○遠山国務大臣 新しい第二期の科学技術基本計画の中でも、基礎研究の重要性というのが非常にウエートを重くうたわれているところですし、今斉藤委員がおっしゃいましたように、まさに基礎研究が伸び伸びとした研究者の発想に起因して、そこで未知の分野を切り開いていく、そのことが人類の発展にもつながるような独創的な研究成果をもたらすということは、揺るぎないことだと思います。
 先般の野依先生のノーベル賞受賞の弁におきましても、自分がここまで来たのは科学研究費補助金による基礎的な研究をずうっと支えてくれたからだということを何度も何度も明言していただきました。そのように、野依先生の研究の成果は、単なる独創的な研究ということでノーベル賞をもらったというだけではなくて、幅広くその成果が産業にも裨益したということでございますが、やはり基礎は基礎研究ということでございます。
 その際に、研究の活性化やすぐれた研究成果の創出、あるいは効果的な資源配分、国民に対する説明責任などの観点から、公正で透明性の高い評価が重要というふうにしているわけでございますが、例えば、そのことについて、代表的な基礎研究費であります科学研究費補助金を例にとりますと、研究費規模の大きな種目の場合は、事前、中間、事後の評価を実施し、そして審査結果は、理由を付して文書によって開示しておりまして、また、申請件数の多い研究種目の場合にも、合議による事前評価を実施して、審査結果について、不採択者に対してはおおよその順位を通知しておくというようにするなど、まさに公正でかつ透明な評価というものを実施しているところでございます。
 このように、今後とも、基礎研究の推進に当たりましては、ピアレビュー等による厳正な評価の実施と評価結果の開示、これによって研究がきちんと評価されて、しかもそれが客観性を持って評価されているということが、恐らく、いろいろな力を持った研究者にとって、その後の意欲ある取り組みを促すのではないか、そのような考えに基づいてそうした取り組みというものを進めていく考えでございます。

○斉藤(鉄)委員 この基礎研究の重要性、推進するための評価、これは本当に大事でございまして、これは後でまた、次のテーマを議論した後、それを踏まえて、またちょっとここに返らせていただきます。
 第二期の重要政策、私は、二番目に重要なのは、ここに書いてございますけれども、重要政策として挙げられておりますけれども、研究開発システムの改革ということで、具体的には、例えば競争的資金の倍増と間接経費三〇%の導入というのが重要政策の柱として書かれております。
 競争的資金、つまりファンドを設けて、そのファンドに対してある意味では公募をして、それに対して評価をして、いいと評価の高いものについて重点的に研究開発投資をしていくというシステム。そして、それに間接経費、いわゆるオーバーヘッドを認めるということ、これも私非常に重要なことだと思います。そして、一期の反省として出てきた、戦略重点化がないということに対する一つの答えだと私は思っておりますが、この競争的資金の倍増とオーバーヘッドの導入、これについては現在どのように進展しておりますでしょうか。

○山元政府参考人 御説明いたします。
 競争的資金、今先生おっしゃられました、まさに、研究開発課題を公募して、事前審査を経て配分される資金、それでございますが、今現在、政府全体で約三千億円ございます。この三千億円を第二期の科学技術基本計画の期間中五年間で倍増しようという目標が立てられているわけでございます。
 この競争的資金は、研究者にとっても研究費の選択の幅を与えてくれるわけでございますし、また結果的には、競争的な研究開発環境、これの形成に貢献するものということで、この倍増をぜひ私ども努力してまいりたい、こう思っておるわけでございます。
 また、間接経費、これは、競争的資金になりますと、その機関にとって、結果として、その競争的資金を獲得した研究者が所属する研究機関そのものにとっては負担になり得るところがあるわけでございます。したがいまして、その研究機関の管理等に必要な経費を間接経費という形で配分したらどうかという考え方がとられておりまして、当面三〇%を目安とした経費の導入ということが考えられているわけでございます。具体的には、既に平成十三年度予算におきまして間接経費の導入ということはスタートをさせていただいてございます。
 また、競争的資金につきましても、政府全体で各省いろいろな政策目的に応じた競争的資金がございますけれども、私ども文部科学省におきましては、科学研究費の補助金、これは、まさに研究者の自由な発想に基づく研究ということで、いわゆるボトムアップの研究でございますが、さらには、戦略性を持ったトップダウン型の研究といたしまして、科学技術振興事業団で進めてございます戦略的な創造研究推進事業、さらには科学技術振興調整費、これにつきましても競争的資金として運用されてございますが、これ自身は、総合科学技術会議の方針に沿いまして、科学技術システムの改革を促進するための使い方をしようじゃないかというふうなことで、現在、平成十三年度から運用が始まっておるところでございます。
 さらには、大学とか民間のいろいろな独創的なシーズを実用的な技術に育成していこうということで、産学官の連携イノベーション事業として競争的資金の考え方でやっていこうとか、こういうことで、平成十四年度の概算要求に当たりましても、非常に厳しい財政事情の中ではございますが、文部科学省といたしましては、重点的な増額要求ということをさせていただいておるところでございます。
 私ども、この競争的資金につきまして、まさに倍増ということを目指しまして、拡充を図るのは当然でございますが、あわせまして、運用も含めた改善の努力、これも必要かと思っておりまして、その両面について引き続き努力してまいりたい、こう思っております。

○斉藤(鉄)委員 この競争的資金と、前の質問で質問いたしました基礎研究に投ずるお金、この関係についてはまた後でもう一度質問させていただきますが、その前に、重要政策の中で挙げられております産業技術力の強化と産官学連携の仕組みの改革、それから地域における科学技術振興のための環境整備。
 これは、地域における科学技術振興のための環境整備というのは、景気回復という意味でも非常に大事だと思います。地域地域にいろいろな特徴ある技術がございます。その技術と大学の知識を結集して、新しい技術、新しい産業を興していこう、その先端に文部科学省のこの事業を置いていこうということで非常に重要な柱だと思いますが、この産官学連携と地域の科学技術振興、これについて現状をお伺いします。

○青山副大臣 まず、産官学連携を、第二期科学技術基本計画の中では進めていくということで強く位置づけられておるわけですが、その意義は当然、斉藤委員の方がよく御存じかもしれませんが、あえて言わせていただいてよろしいでしょうか。
 研究者や研究機関みずからが、その成果を社会に還元していこうという意識をまず持ってもらうこと、そして産官学の連携によって大学等の研究成果を社会に活用していく、こういうことが重要でございまして、例えば、人材交流、技術移転、事業化というのが強く位置づけられておるんですが、産学官連携強化のための人材交流を進めていかなければいけない、それから公的研究機関の研究成果を産業へ技術移転していく、それからそれを生かした事業化を進めていく。
 そういう意味で、文部科学省としては、企業との共同研究の拡充、それから大学の共同研究センターの整備を進めていく、それから技術移転機関、例えばTLO、これによる大学の研究成果を特許化していく、さらには国立大学の教官の兼業を緩和していくというような取り組みを行ってきておるところであります。
 大学を起点とする日本経済活性化のための構造改革プランというのが発表されておりまして、遠山プランとして出ておりますが、産学官連携の重点項目の中の一つに位置づけておりまして、科学技術・学術審議会のもとに産学官連携推進にかかわる専門の委員会を設置いたしまして、新技術、新産業の創出につながる産学官連携のあり方について、ことしの七月に中間取りまとめを公表いたしました。そういうようなことで、大学を起点とした我が国の経済の活性化をこれからさらに進めていきたいと考えております。
 今、大学を起点としたと申し上げましたが、地域の科学技術振興についても新たな地域科学技術振興システムを構築していくことが必要だと考えております。
 そのためには、大学を核とした産学官連携強化が非常に重要な課題となっておりまして、地域結集型共同研究事業を進めていくこと、それから知的クラスターの形成を目指した全国三十カ所における調査事業を既に進めておりますこと、研究成果の活用拠点、いわゆる研究成果活用プラザというものを全国で七カ所設置して、これを運営して活用のめどを立てていきたいと考えておりまして、改革先行プログラムを踏まえまして、新産業創出につながるすぐれた研究成果を生み出すところの大学の施設の整備が少しおくれておりますから、これを重点的に整備していきたいと考えております。それから、産学官連携拠点となる大学の研究成果に基づいて、地域の特性を踏まえた企業化のシーズの開発を今検討していくところであります。
 今後も、地域の主体性や地域が持っておる個性を発揮していけるように、研究成果の集積を持つ地域を創造的にシステムを構築して、地域科学技術の振興を図っていきたいと考えております。

○斉藤(鉄)委員 地域の産官学連携、新しい科学技術で新しい産業を興していく、その事業にぜひ力を入れていただきたいと思います。
 残り少なくなりましたが、ちょっと最初の問題に戻りまして、基礎研究に投資するという問題、それから二番目に、競争的資金を倍増する。現実に今いろいろな第一線の研究者から声が上がってきておりまして、私のところのEメールにもたくさん研究者から声が上がってきております。
 第一の最大の心配は、競争的資金を拡充する、これはいいんだけれども、競争的資金の拡充の場合、成果がはっきりわかっている、研究すればこれだけの成果が上がりますということがわかっている研究にどうしても行きやすい。ところが、基礎研究というのは、本来、研究しても成果が出るかどうかわからない、そのような、ある意味では未知に挑戦する、これが本当の基礎研究。したがって、基礎研究に力を入れるとはいいながら、現実問題として、競争的資金の方に重点が移って、基礎研究が軽くなっていくのではないか。
 ましてや、日本学術振興会、これまで大学の基礎的なところに本当に目配りしながらやってきたところが、いわゆる競争的資金の牙城である科学技術振興事業団、この方に統合という話もございます。そうなると、いよいよ基礎研究、本来、これから世界の中で知の発信の中心として頑張っていかなきゃいけないこの日本が、基礎研究がおろそかになってくるのではないかという思いが、この二期の基本計画を遂行していく中で沸き上がってきているのですが、これに対してはどのようなお考えでしょうか。

○遠山国務大臣 今御指摘の点は本当に大事なことでございます。えてして、科学技術振興、科学技術創造立国という場合に、応用的なこと、あるいは目的が明確にされて、そして重点化された問題だけに絞るのではないかという危惧があると思います。
 しかし、私どもはもともと、文部科学省、大学における自由な研究、そして研究者の発想というものを大事にしてまいった仕事の歴史がございます。特に科学研究費補助金は、長い歴史を持って、そして研究者の発想を大事にしていくボトムアップ型の代表的な研究費でございます。これを倍増しようという気持ちこそあれ、これを少なくしていくとか、あるいはトップダウンのものだけを拡充していくというようなことは、これはあってはいけないと思いますし、私どもの責任において、そこはしっかりと守っていきたいと思っております。
 ただ、私が申し上げたいのは、それは守りますけれども、しかし、大学の研究が内にこもって、そして中にこもったあるいは外とのつながりを考慮しないような、そういうことだけにとらわれるのではなくて、やはり社会の中の存在としての大学、そしてその中での研究ということも視野に入れながら、しかし、基礎的な研究、特にピュアな研究、直接には利益、産業に結びつかないようなことについても、例えば宇宙の真理とか、そういったことについても大変大事なわけでございますね。そこのところを、これまでの考え方から一歩出て、社会を見渡しながら、しかし大事なものは守っていくという、そこのところの視野の広さというものを持ちながら、私は、研究というものを、私どもがそれをバックアップし、研究者もそういう視点を持ちながら、自信を持って取り組んでいただきたいと思っております。

○斉藤(鉄)委員 終わります。